OPINION2 対面以上にID が重要 オンライン研修の定着で より“ブレンディッド”な学びへと進化 中村文子氏 ダイナミックヒューマンキャピタル 代表取締役
コロナ禍で、日本でもオンライン研修が定着しつつある。
今後コロナが収束し、オンラインも対面も可能な状況になったときに、効果的な研修を実施するには、どのような点に注意して設計すべきだろうか。
10年以上前から研修のオンライン化が進んでいるアメリカの事情に詳しい、ダイナミックヒューマンキャピタルの中村文子氏に聞いた。
集合することに意味のある「参加者主体」の研修
コロナ禍で研修のオンライン化に試行錯誤する日本企業に、アメリカで蓄積された豊富なノウハウを紹介してきた中村文子氏は、今後の研修の動向について次のように話す。
「現在のような非常時では100%オンライン研修に切り替わっていますが、新型コロナが収束すれば対面での研修は復活するでしょう。しかし、コロナ以前とまったく同じ世界に戻ることはないと思います。コロナ禍は企業にとって、対面で集合研修を行うことの意味を問い直す契機になりました。『この内容なら、わざわざ対面で実施しなくてもオンラインでできる』ということが判明した研修は多いのではないでしょうか。結果として、以前のように対面で研修ができる時期が戻っても、集合することに意味がなければ、集合研修は行われなくなるだろうと思います」(中村氏、以下同)
集合する意味のある研修として、中村氏は「参加者主体」の研修を挙げる。
「参加者主体の研修とは、参加者が主体的に学び、実践することに主軸を置いた研修のことです。研修の本来の目的は、参加者が研修で学んだことを職場で実践し、ビジネス上の成果を生み出すことですが、参加者が研修に受け身の姿勢で臨んでいる限り、職場での実践にはなかなか結びつきません。したがって、研修は参加者が主体的に参加できるようにデザインすることが重要です」
図1のAとBは、研修における講師と参加者との関係を示している。Aは、講師が問いかけて、個々の参加者が答えるやり方である。しかし、講師と参加者の対話だけでは、主体的にかかわれるのは1人だけで、他の参加者は話を聞くだけになってしまう。それに対してBは、講師と参加者の間だけでなく、参加者同士の間にも対話が生まれている状態を表している。“参加者主体の研修”では、このBのような状態を目指す。
「何らかのワークを行い、個人で考えたことについて隣の人と話しあったり、グループでシェアするなど、参加者全員が主体的にかかわれるようにすることが参加者主体の研修であり、これこそが集合する意味のある研修の姿だと思います」
参加者主体の研修は、対面だけでなくオンラインでも実現可能だ。
「たとえば、オンライン研修でよく利用されるZoomには、チャットやスタンプ、投票など、参加者が主体的にかかわるための様々な機能があります。こうした機能をフルに活用することで、参加者主体の研修をオンラインでも行うことができます」
Aのように講師が問いかけて1人に答えさせるだけであれば、わざわざ参加者を同じ時間に集めて実施する必要はないという。
「eラーニングのなかには、講義の合間に問題が出題され、回答しないと先に進めないようなインタラクティブ(双方向)なものもあります。こうしたツールを活用すれば集合する必要はありませんし、むしろ自分のペースで進められるオンデマンド学習の方が、知識習得型の内容には適しています」