HR TREND KEYWORD 2021│人事│エスノグラフィー 文化や人間関係もふまえた課題の本質をつかむ調査手法 神谷 俊氏 エスノグラファー 代表取締役
「エスノグラフィー」という調査手法をご存知だろうか。
定量調査では得られない結果や真因を得られるという。
その調査手法を企業の各種調査に用い、自身も「エスノグラファー」として活動する神谷俊氏に、ニューノーマル時代だからこそ知っておきたい、人の成長や組織の変化のとらえ方を聞いた。
エスノグラフィー(ethnography)とは、もともとは文化人類学や社会学等で使われる調査手法である。自分とは異なる価値観や文化をもつ人やグループに対して、調査者が自ら参加し、観察やインタビューで得られた質的なデータを用いて、その実態を理解しようというものだ。
一見、経営や人事、組織開発といった分野からは遠いものと感じられるかもしれないが、近年、企業がこの手法を使って様々な調査を行うケースが増えてきているという。「エスノグラファー」として、企業や地域で調査やコンサルティングを行う神谷俊氏は次のように話す。
「エスノグラフィーは、日本だと少し特殊なイメージがありますが、海外では一般的で、『エスノグラファー』とよばれる人もたくさんいます。企業においては、プロダクト開発やマーケティングに関する調査、UX(ユーザーエクスペリエンス:ユーザーが1つの製品やサービスを使用することで得られる体験の総称)の一環として取り入れているケースが多いのですが、人事や組織開発に関する調査にも用いることができます。私のところにくる依頼も、マーケティング的な業務と人事や組織開発的な依頼が半々です」(神谷氏、以下同)
定量調査だけでは見えないリアルな実態を導き出す
具体的には、どんな方法で調査を行うのだろうか。
「エスノグラフィーの調査では『フィールド(現場)』と『参加』が重要なキーワードになります。調査対象となるフィールドには、必ず特有の文化や人間関係が存在しています。多様な影響要因があり、断片的なデータのみで合理的に考えることが難しい領域ですから、定量的な調査だけでは本質をつかむことができません。エスノグラフィーはそうした特有の文化や人間関係に、実際に足を踏み込んで行う調査です。そのため、意外な結果や、リアルで生々しい実態が見えてくることが多いのです」
ビジネス分野では、図1のような場面で活用されるケースが多いという。調査方法やその意外な結果、実態について、人事や組織開発、マーケティングにおける事例をいくつか見ていきたい。