社会課題を事業で解決、そして次世代人財育成も!? 『可能性アートプロジェクト』 巽 庸一朗氏 凸版印刷 人事労政本部 人財開発センター センター長
本誌を開いてすぐの「気づきの扉」に掲載しているアート作品は、『可能性アートプロジェクト』という、凸版印刷が複数の障がい者支援団体とともに2018年から推進している取り組みに賛同し、今年5-6月号より掲載しているものである。
同社はこの取り組みにより社会課題の解決と経済的事業活動を両立させるビジネスモデルを構築し、そのプロセスをつうじて次世代リーダー人財を育成している。
同プロジェクトの誕生の経緯から具体的な施策、さらに今後の展望について聞いた。
才能と可能性を最大限に引き出したい
『可能性アートプロジェクト』発足のきっかけは2017年にまで遡る。
とある夜、巽氏が偶然目にしたニュース番組で、「障がいのあるアーティストの作品が映画のポスターに採用された」という話題が取り上げられていた。巽氏は作品に目を奪われるとともに、同時に紹介された土江和世氏(NPO 法人サポートセンターどりーむ理事長)のインタビューでの発言に深い感銘を受けたという。
「土江理事長の『人間は障がいの有無に関係なく、才能をもっていると気づかせてもらった』という言葉は、当社の人財開発センターが目指すコンセプトと一致していると瞬時に感じました。私たちも日々、『社員一人ひとりの能力、才能を最大限引き出すためにどうすればよいか』と、試行錯誤していたからです」(巽氏、以下同)
サポートセンターどりーむ(以下、どりーむ)は、島根県出雲市を中心に活動している団体で、アートの制作によって障がい者の才能を開花させ、雇用を促進し、自立支援の在り方を提案している。
毎年、当社で制作している社員向けの自己啓発促進イメージポスターに掲載する作品の制作を、どりーむのアーティストに依頼したい――。強く思い立った巽氏は、すぐさま土江理事長に連絡をとり、部下数名とともに現地へと赴いた。
「ボランティア」ではなく「ビジネス」を前提とした発注
「当社の経営の基軸は『人間尊重』。選ばれた誰かではなく、社員一人ひとりが毎年成長することが何よりも重要であると考えています。だからこそ、『無限の可能性・才能』というテーマで作品を制作していただき、自己啓発促進イメージポスターを通じて、全社員へメッセージを共有したいという我々の思いを土江理事長にお伝えしました」
巽氏の熱意は伝わり、土江氏は、その場でアート作品の制作を快諾。そして巽氏は「ボランティア」ではなく、あくまで「ビジネス」としてアート作品を発注した。
「いわゆる社会貢献的な意味合いだけの活動支援ではなく、どりーむのアーティストは、当社の人財開発・育成活動にご協力いただいている対等なビジネスパートナーであるからです」