CASE2 オイシックス・ラ・大地|顧客との接点を大切に ロジカル思考×リアル体験がアウトプットの「量」と「質」を高める 三浦孝文氏 オイシックス・ラ・大地 HR本部 人材企画室 室長
働く女性の心をつかんだ「Kit Oisix(キット オイシックス)」、コロナ禍で影響を受けた酪農家を支援する「牛乳支援コーナー」など、オイシックス・ラ・大地のアウトプットからは「社会課題を解決する」という強い目的意識を感じる。
このような優れたアウトプットを生むために、普段から何を意識し、どのような組織づくりが行われているのだろうか。人材企画室・三浦孝文氏に話を聞いた。
マッキンゼー出身の髙島宏平氏が「Oisix」を創業して、世界初の生鮮食品ECサイト「Oisix.com」を立ち上げたのは2000年だった。当時は手に入りづらかった有機野菜を手軽に楽しめることから、感度の高い消費者を中心に利用が拡大した。2017年には「大地を守る会」、2018年には「らでぃっしゅぼーや」と経営統合。パワーアップした「オイシックス・ラ・大地」は、現在毎月30万人を超える消費者が定期利用する食品宅配サービスへと成長している。
食品宅配サービスは、様々な業務で成り立っている。日本全国の生産者から安心安全な食品を調達する業務や、ECサイトの企画・構築・運用、商品を届けるロジスティクス、既存客との接点を担うカスタマーサポート、そしてそれらの事業部門を支えるコーポレート。これらの業務に携わる従業員は、果たしてどのようにアウトプットを生み出しているのか。人材企画室室長の三浦孝文氏に、アウトプット力を高める取り組みについて話を伺った。
アウトプット=顧客にとっての提供価値
オイシックス・ラ・大地では、アウトプットをどのように定義しているのか。
「私たちはお客様をとても大切にしている会社です。その意味でお客様が献立を考え、手元に商品が届いて食卓に料理が並び、家族や友人と食事をしたときの体験など、顧客にとっての最終的な提供価値がアウトプットだと考えています」(三浦氏、以下同)
提供価値という言葉だけだと抽象的な印象を受けるが、同社では価値を定量化・可視化している。
「私のいる人材企画室にとっての顧客の1つが採用活動で向き合う求職者≒未来の仲間です。誰かを新たに採用するときは、その人を雇うことによって得られるであろう効果―たとえば『年度末に売り上げ・利益・会員数をこれくらいにする』『この時期までに新しいサービスを開発してお客様に提供する』―を明確にしたうえで採用活動を行います。
当然、部門や職責によってミッションは異なります。たとえばE コマースのチームなら受注率や新規会員数、カスタマーサポートなら顧客からの問い合わせに対する応答率や課題解決までの対応日数、ロジスティクスなら欠品率の削減などが、顧客への価値に直結するでしょう」
さらに、そこに至るまでのプロセスにおいても同様だという。
「プロ野球では、『100本塁打達成』というように、最終的な目標にたどりつくまでの節目を見える化して評価しますよね。それと同じように、私たちの業務も『会員1万人獲得』『売上月10億円達成』と、部門におけるプロセスも定量化し、しっかり追っていきます」
定量的に可視化されたアウトプットは評価とも結びついている。三浦氏は人事の例で解説してくれた。
「採用ならばアクイジションコスト(人材獲得コスト)の額、オンボーディングでは半年以内の離職率が評価にかかわってきます。また現在、我が社の障がい者雇用は法定雇用率をしっかり満たしていますが、さらに高い水準に推移させることも考え、実行しています」
7つの行動規範でアウトプットの質を担保
アウトプットに定量的目標を掲げ、そこに評価が絡むとなると、気になるのは「数字だけを追いかけてしまう社員」が出ることだ。顧客にとっての価値を重視していたはずなのに、定量的なアウトプットの追求によってズレが生じる心配はないのだろうか。
オイシックス・ラ・大地は、「これからの食卓、これからの畑」という理念を掲げているが、その理念に紐づけて、「ORDism(オーディズム)」とよばれる7つの行動規範を定めている。