CASE1 ヤッホーブルーイング|効率やコストにとらわれない コミュニケーションの土台と学びの機会でアウトプット力を醸成 高畑 健太郎氏 ヤッホーブルーイング モチベーションブルワーズ(HR) ユニットディレクター
フラットな組織運営のもと、独自の企業理念である『ガッホー文化』を掲げ、社員同士での合意形成による意思決定を重視するヤッホーブルーイング。
いわゆるティール組織の先駆的存在である同社では、社員の「アウトプット力」の向上に向け、具体的にどのような取り組みを行っているのだろうか。
人材開発を担当するモチベーションブルワーズの高畑健太郎氏に話を聞いた。
「有益なアウトプットの種は、皆、心のなかにもっています。我々が腐心しているのは、『いかにそれを引き出せるか』ということです。
当社はフラットな組織であることが報道されていますが、フラットな組織であり続けることが目的ではなく、議論を尽くし、最善の打ち手を決め、社員全員が納得感をもちながら業務を行うことで、企業にとって最高の成果を出す。そのために一人ひとりが自分の意見や考えを発信し続けることこそ、質の高いアウトプットへの第一段階です」
こう述べるのは、『よなよなエール』などのクラフトビールで知られるヤッホーブルーイングで、モチベーションブルワーズ(HR) ユニットディレクターを務める高畑健太郎氏である。
15年連続増収増益、大手がシェアを占有するビール市場でもファンを増やし続ける同社の成長の土台には、「成果につながるアウトプット」があった。
具体的にはどんな施策を行っているのだろうか。以下に見ていこう。
コミュニケーションコストは惜しまない
まずは、2014年にUターンで同社に転職した高畑氏も最初に体験した、1カ月間の入社研修だ。
「一般的なキャリア採用であれば、いわゆる即戦力として、すぐ現場に配属されるでしょう。しかし当社では新卒・中途を問わず、入社研修にじっくり時間をかけます。企業文化や仕事の進め方を理解するために作成されたプログラムを通じて、まずは社員の“インプットの目線”を揃えていきます」(高畑氏、以下同)
コミュニケーションの質を支えるコミュニケーションの量も、一定量担保されている。毎朝30分間、仕事の話を一切しない“雑談だけ”の朝礼はその一例だ。
「一見、効率度外視にも見えるかもしれませんが、雑談は個々の社員の人柄や価値観、プライベートを知るうえで非常に効果的です。たとえば、『子どもが風邪をひいて大変だ』とか『送り迎えがある』といった話を常日頃から聞くことで、あるメンバーがミーティングに参加できなかったとしても、相手の状況を想起し、思いやることができます。
また、当社には会議も含め、普段から否定的な言葉選びを避けるグランドルールがあります。こうした工夫により心理的安全性を高め、さらに『同僚への敬意』をもつことで、お互いが本当に言いたいことが言いあえる環境をつくることができるのです」
社員同士が情報や知識を共有し、意見を出し尽くす「土台」として、コミュニケーションコストを惜しまない文化が根づいているのである。