第13回 最終回|NEC マーケティング戦略本部 シニアエキスパート/こすぎの大学・岡本克彦さん 自分を変える“時代の波”の乗り方 岡本克彦氏 NEC マーケティング戦略本部 シニアエキスパート/こすぎの大学|寺田佳子氏 インストラクショナルデザイナー
人は学べる。いくつになっても、どんな職業でも。
学びによって成長を遂げる人々の軌跡と奇跡を探ります。
岡本克彦さんはNECではブランド戦略、地元ではソーシャル系大学の運営と、軽やかに場を行き来する学びの達人です。
「会社のボク」と「地域のボク」、そして「ボク自身のボク」の3つの顔に寺田さんが迫り、変化の波乗りを楽しむコツを聞きました。
01 小さな楽しみを見つける達人
“オカポン”こと岡本克彦さんに初めて会ったのは今から7年前。「学び続ける人がリーダーになる時代」というテーマで、私が講演したときのことである。その後、福島の復興支援イベント(という名の飲み会)や、オカポンの地元・武蔵小杉のソーシャル系大学(という賑やかなコミュニティ)などで会うたびに、なんて自由でなんて楽しそうな人だろうと羨ましく思っていたが、実は日本屈指の電機メーカーの社員でもある。
緊急事態宣言が出た今年4月。オカポンは“自宅まで通勤”を始めた。インスタグラムに毎日アップされる写真は、河川敷ののどかな風景で、通勤の慌ただしさとは別世界である。
いったいどこから自宅に通勤しているのかと不思議に思ったが、
「ボクはすごい寝坊助(ねぼすけ)で、在宅勤務になってから起きる時間がだんだん遅くなってしまって。とうとう8時25分起床で8時半始業、なんてことになっちゃったんです」
このままではマズい……。
不安になっていたところに、地域活動で出会った会社の先輩から「いつも出社する時間に自宅の周りを散歩している」という話を聞いた。
「通勤の代わりに散歩? 健康的だなぁ!」
さっそく早起きをし、自宅近くにある多摩川の河川敷を30分ほど歩いてみた。ふだん駅まで急ぐ時とは違う、気持ちのゆとりが心地よかった。すると、それまで気がつかなかった季節の色が鮮やかに目に映るようになった。
ここでぶらぶら歩きがただの散歩で終わらないのが、オカポンである。この早朝散歩の写真に“#自宅まで通勤”と、ハッシュタグをつけることで、“新しい日常”に新しい楽しみが生まれた。
何気ないことにも、フッと笑いがこぼれるような仕掛けをするところが、らしいですよね!
「だって、“楽しくなければ続かない”って思っていますから」
“#自宅まで通勤”の効果は絶大だった。朝になるとカラダが「通勤したいモード」になり、自然と目覚めるように。起床は毎日10分ずつ早くなった。気がついたら朝の5時に散歩を始め、川辺で朝日を浴びるのが新しい通勤スタイルになっていた。