CASE3 博報堂|フリーハンドのマネジメントから脱却 ツールを活用してマネジメントの暗黙知を形式知化 白井剛司氏 博報堂 人材開発戦略局 マネジメントプラニングディレクター
「成果主義から成長主義へ」をコンセプトに、人事制度改革を進めてきた博報堂。
部下の成長の鍵を握るマネジャーを、様々な施策で支援してきた。
同社で人材育成に長年携わってきた白井剛司氏は「これらの施策は、With コロナ・マネジメントにも活きる」と話す。
コロナ禍においてマネジャーをどう支援していけばいいか、また今後どのように支援しようとしているか、話を聞いた。
コロナ禍におけるマネジメントの課題
新型コロナウイルスの感染拡大で働き方が大きく変化するなか、特に困っているのはマネジャー層だ。コロナ禍で顕在化したマネジメントの課題として、白井氏は以下の5点を挙げる。
課題❶ 関係性構築の難しさ
「チームで成果を出すためには、心理的にも安心安全な職場環境を整備したうえで、メンバーと信頼関係を築いていくことが重要です。しかし、コロナ禍で顔を合わせてのコミュニケーションは激減し、安心安全な職場環境やメンバーとの信頼関係を築くことが、以前に増して難しくなっています」(白井氏、以下同)
課題❷ 仕事スタイルの理解
どんな仕事スタイルが快適かは、人によって異なる。
「たとえば、未確定な状態でもまず動くというスタイルの人もいれば、きちんと要件定義をしてからでなければ動きたくない、という人もいます。テレワーク下では仕事スタイルの違いがより顕著になるため、プロジェクトが始まる前などに、快適な仕事スタイルを話し合う場を設けることが必要になるでしょう」
課題❸ 様々な立場の人への配慮
どんな組織でも、現代のマネジャーは多様なメンバーをマネジメントしているもの。しかし、With コロナ時代には、特に配慮が必要なメンバーがいる。
「たとえば、新入社員や中途入社者は、弱い立場になりがちです。マネジャーからも、彼らに気軽に声をかけたり、伴走したりできる機会が減り、育成が困難になっているという声が多く聞かれます。不安を抱えているメンバーをどのように気遣い、育成していくかは大きな課題です」
課題❹ 業務依頼方法の変化
働き方が変化したことで、業務依頼の方法も変化している。
「これまでは、部下と何度もやりとりしてすり合わせたうえで、業務を依頼してきたでしょう。また部下と並走する時間も、それなりに長かったはずです。しかし、リモート環境では、そのようなすり合わせは難しくなっています。これからは、業務を依頼する側があらかじめ要件を明確に定義したうえで、例えるなら、一つひとつの業務単位をモジュール化したうえで依頼し、複数メンバー間の成果物を組み合わせていくようなやり方になるのではないでしょうか」
白井氏いわく、「『すり合わせ』から『組み合わせ』への変化」である。
「今は非定型の業務が多いので、要件定義の難易度も高いですが、マネジャーは落としどころを見据えて、業務を明確にしたうえで人に渡していくことが求められるようになるでしょう」