CASE.2 日本たばこ産業 カギは自ら学びたいという「渇望」 学習意欲を刺激する制度を構築
海外でのM&Aを積極的に展開し、たばこ市場では世界第3位のグローバル企業となった日本たばこ産業(JT)。
海外事業のウエイトをいっそう高める中で、日本人社員の語学力強化策をどのように展開しているのか。
●英語教育 実践力を重視したプログラム
健康志向の高まりや高齢化などにより、国内の喫煙率は年々低下を続ける。そんな中、日本たばこ産業( JT/以下JT)は、主力事業であるたばこ分野での海外進出を積極的に進めてきた。同時に、国内では医薬品や飲料、加工食品などの分野にも進出し、事業の多角化を図っている。
1999年には、RJRナビスコ社から米国外のたばこ事業を取得。また、2007年には英国ギャラハー社をM&Aで取得するなど、1994 年の東証一部上場以降、海外たばこブランドや企業の買収にも意欲的だ。現在、同社のグループ利益の6 割以上は海外たばこ事業が占めるまでになっている。たばこ業界の市場規模で見ても、フィリップ モリス、ブリティッシュ・アメリカン・タバコに次いで世界3位のシェアを占める。
いまや、JTグループは単なる国内の大企業にとどまらない。グローバル企業たらんとし、また現にグローバル化に成功してきた。グローバリゼーションに対応できる人材を育てるために、同社ではさまざまな研修・教育プログラムやサポートを行っている。
語学面を中心に見てみると、まず新入社員研修で、全員がTOEICを受験。英語でのコミュニケーションスキルの現状レベルを知る。その後も、全社員が年2回、TOEICを受験し、継続して目標を立てられるようにしている。
さらに、希望すれば、全社員を対象とする「ストライク研修」の受講が可能だ。この研修はあくまでビジネスにおける実践力を養うものが中心。グローバル対応力を培う、英文での「ビジネスライティング」「プレゼン」、そして「異文化コミュニケーション」の3つがある(図1)。
これらの研修は年に複数回、開催しているが常に定員枠を超える希望者があり、全員は受講できない。そこで、業務上、英語が必要な社員はビジネス英会話教室などに通い、会社が応分の費用をサポートしている。
● 実践力の向上策 海外研修、派遣制度の活用
同社ではここ数年、採用にあたり、「グローバル企業」であることを強調している。そのため、留学経験者などもともと英語に堪能な人が増えている。それでも入社早々、戸惑いを覚え、学びの必要性を感じる人は多いのではないか、と人事部次長の山本祥太郎氏は言う。
入社後、グループのJTI(JT International/以下JTI)とのやり取りでは、英語が共通語となる。また、部署によっては国内での会議、メールといったやり取りでも、1人でも外国人が交じっていれば、原則として英語のみを使用する。特に、資材の調達やマーケティングなどの部門は海外との折衝も多く、英語でのコミュニケーションが前提だ。
山本氏は、語学やコミュニケーションのスキルを高めるためには、何より自主性が大切と指摘する。