第13回 ターニングポイントの2020年度は不安を払拭し、高ぶる書籍を 菊池健司氏 日本能率協会総合研究所 MDB事業本部 副本部長
経営や人事を担う人材にとって、ビジネストレンドの把握は欠かせない。
1日1冊の読書を20年以上続ける読書のプロが、ビジネスを読みとく書籍を紹介する。
先読みが難しい時代
2020年8月……本来であれば東京オリンピック・パラリンピックの真っ最中であり、日本国内が沸きに沸いているはずであった。
コロナショックは国家の威信をかけたイベントを先送りにし、「新たな生活様式」と「仕事様式」を生み出した。テレワークはオリンピックを契機に特に首都圏近郊の企業を中心に広がる想定が、思わぬ形で前倒しとなった。コロナ禍発生から、はや半年。本誌の読者の皆様は、もうテレワークにはすっかり慣れてきた感じであろうか。
最近、企業の経営者の皆様から「当社におけるコロナショックの影響はいつまで続きそうか、見解を聞かせてほしい」とお声がけいただくことがずいぶん増えた。先が見えない時代には、歴史に学ぶことが本当に重要だと感じる。ちなみにリーマンショック後、日本の上場企業が利益回復までに要した期間は約5年であった(東京商工リサーチ調べ)※1。コロナ禍からの立ち直りに、私たちはこれから何年を要するのだろうか。
前倒しとなる業界激変
ということで、今回は「失敗に学ぶ」というテーマを予定していたが、コロナ禍からの立ち直りという視点から、2020年がどんな意味をもつのかを考えてみたい。
もともと、2030年、そう10年後には産業や業界構造が劇的に変化する、具体的には異業種合併が当たり前の時代がやってくると予想していた。コロナ禍がこのトレンドを前倒しにする気がしてならない。今後、新たな道に舵を切る企業が間違いなく増えていく。2020年はきっと、コロナ禍初年度と共に、ターニングポイントの1年として刻まれることになる。不安が先立つ時代には、心に奥深く響く、気持ちが高ぶる書籍を読んでおきたい。
最近意識して読むようにしているのは、(実は)以下のジャンルである。
①日本企業が世界に遅れをとるデジタルトレンドをまとめた書籍
②成長産業の様々な可能性に言及していて読んでワクワクする書籍
③業界に風穴を開ける企業に関する論考や事例を集めた書籍