第8回 掛け算思考とビジネスチャンス 菊池健司氏 日本能率協会総合研究所 MDB事業部 部長
経営や人事を担う人材にとって、ビジネストレンドの把握は欠かせない。
1日1冊の読書を20年以上続ける読書のプロが、ビジネスを読みとく書籍を紹介する。
「企業」と「業界」の合併の時代へ
時代を先読みするための手段の1つとして、日本や世界のM&A トレンドがどうなっているかを常に定点観測している。たとえば、日本国内の場合、「M&Aニュース(日本M&Aセンター)」(https://www.nihon-ma.co.jp/news/)、「マールオンライン(レコフ)」(https://www.marr.jp/)といったサイトを参考にしている。興味のある方はぜひご覧いただきたい。
こうした情報ソースを眺めながら、「なぜこのようなM&A が起こるのだろう」「なぜこの会社があえてこういう企業を傘下に収めるのだろう」といったことに思いを巡らせる。完全異業種同士のM&A の件数は日本ではまだ10% 程度というデータもあるが、今後は異業種企業のM&A が増加していくと見ている。
そして、異業種における業界そのものの合併が進み、ビジネスシーンにおける「業界」の定義が大きく変わっていく予感がする。「自動車×住宅」「家電×金融」といった業界合併が仮に起こっても、もはや驚かない。その劇的な変化の時代は、すでに緩やかに始まっているといえるのではないだろうか。
「掛け算思考人材」が重要な時代
このような時代を迎えるにあたり、極めて柔軟な思考が必要となる。本連載でも何度かお伝えしてきたのだが、これからの時代こそ「掛け算発想」ができる人材が本当に重視されていくのだろう。社会、政治、経済、技術の変化・進化から世のトレンドを先読みし、自社や自業界に与える影響や、これから起こるであろうことを推測できる人材。そのうえで、「きっとこのような時代になっていくので、当社はこう考えるべきです」といった提言ができる人材。経営型人材には、こうした資質が必要となっていく。
掛け算思考人材を考えるうえで読んでおきたい書籍は以下に大別される。
① 新たなビジネスモデル(サブスクリプション等)が学べる書籍
② 多くの業界の変化が学べる書籍
③ すでに起こった未来が学べる書籍