CASE1 SCSK|2019年から健康経営の「第2ステージ」へ 「社員のため」のブレない健康経営が信頼関係と健康意識を育む 中藤崇芳氏 SCSK 人事グループ ライフサポート推進部長
2013年に本格的に働き方改革をスタートさせ、それと連動して社員の健康に関する取り組みも着実に進めてきたSCSK。
改革実現の鍵となったのは、「変えなければいけない」という会社の本気度と「社員を大切にする」というブレない姿勢だった。同社の歩みについて話を聞いた。
IT業界は“不健康”が常識!?
9,590歩――まず、この数字を特筆したい。SCSKの社員1人あたりの1日の平均歩数である(2018年度実績)。距離にして約6㎞。年間で2,000㎞以上にも達し、ざっと東京から沖縄まで歩いた計算になる。
国が進める国民の健康づくり運動「健康日本21」では、平均歩数の目標値を成人男性で1日9,000歩、女性で8,500歩と掲げているが、同社社員の“健脚”はすでにそれを上回っている。なぜそんなに歩くのか。秘訣の一端を、人事グループライフサポート推進部長の中藤崇芳氏が明かしてくれた。
「弊社では健康経営の一環として2015年から『健康わくわくマイレージ』という施策を推進しています。社員がこれに参加すると、健康に良い5つの行動習慣の実践状況や健康診断の結果などがポイント化され、年間の総獲得ポイントに応じてインセンティブが支給されるのです。5つの習慣の1つにウォーキングがあり、参加者は専用アプリに毎日の歩数を入力します。参加率は社員の99%。『○○まで歩くと1,000歩稼げる』なんて話で職場が盛り上がるのは、弊社ぐらいかもしれません(笑)」
そもそもIT 業界の体質はおよそ“健康的”とは言いがたい。特に同社のようなシステムインテグレーター(SI)企業は、男性も女性も残業や休日出勤が多いケースが少なくないからだ。SCSK は2011年に住商情報システムとCSKの経営統合を経て発足したが、実は「弊社も以前はご多分にもれず、不健康だった」と中藤氏は振り返る。
「IT ビジネスには高い業務品質と多様な能力発揮、創造性が必要で、その大前提は社員の健康であるはずなのに、実際は長時間労働が常態化していました。24時間365日稼働するシステムが相手なので、みんな、それが当たり前だと思っていたんですね。『夜遅くまでいる社員』や『休まない社員』が『良い社員』だという風潮も根深いため、なおさら帰りづらいし、休みづらい。また、優秀な技術者ほど独りで仕事を抱え込んでしまうので、ジョブローテーションも難しい状態でした」(中藤氏、以下同)
こんな労務環境ではいけない。そんな危機感を抱いたのは、親会社(住友商事)から着任してきた当時の経営トップだった。抜本的な取り組みが不可欠と一念発起し、経営統合直後から「仕事の質を高める働き方改革」の推進を重点経営施策として打ち出したのだ。
削減した残業代を社員に還元
ところが現場は現場で、こうした経営の改革姿勢に、当初は疑いの目を向けていたという。過去にも残業削減の呼びかけは何度かあったが、繁忙期や急な依頼が入る度にそれどころではなくなり、結局、現場が“泣かされて”きたからだ。「所詮、社員より数字が大事なんだろう」。社内にはそんな不信感もくすぶっていたと、中藤氏は語る。