部下と上司の意識を変革し 本音の対話を引き出す
トヨタグループの高分子部品(ゴム・樹脂)部門の中核企業として、
自動車の内外装部品やエアバッグ、LED などを製造している豊田合成。
同社では、人材育成や組織改革の必要性を突き詰めた結果、2007年から、
上司と部下との関係に焦点を当てた“風通しの良い職場”づくりに注力。
管理職を対象に、研修や評価などを組み合わせた施策を行っている。
バブル崩壊後、急激に人材育成力が低下
自動車の内外装部品やLEDなどを製造する豊田合成。同社では、2007年から管理職層を対象に、集合研修と教育効果測定、そして人事考課などを組み合わせたコミュニケーション教育に注力している。そのきっかけは、“人材が育っていない”“組織の風通しが悪い”といった認識が社内で強まったことだった。
多くの企業同様、同社もバブル崩壊後、従来の日本的経営から成果主義に転換した。その結果、管理職が自分で成果を上げることに精いっぱいになった。組織のフラット化もあり、部下の面倒を見たり、ものを教えたりすることが希薄になってしまったという。
この状況を受け、同社では、人材育成の体制を立て直すべく、教育体系の再構築に着手した。仕事の基本である「問題解決」はもとより、「育成計画作成」や「OJTの進め方」など、部下を育成するための教育に力を入れた。しかし、こうした教育は、なかなか成果につながらなかった。
トヨタグループといえば「カイゼン(Kaizen)」に代表されるように、問題解決能力教育に定評がある。現状に決して満足することなく、常に「もっと良くする」ための改善を進めていくには、上司と部下が問題を共有し、協働して解決をめざすことが必要だ。その過程でお互いの理解が深まり、部下の成長も促される。
しかし、同社では当時、上司と部下との間の本音のコミュニケーションが十分とはいえず、改善もあまりうまく進んでいなかったという。それは、上司の多くが、そもそも部下との信頼関係をしっかりと構築できていなかったためであった。小栗達人材開発部主監は語る。「部下と上司の信頼関係ができていなければ、いくらOJTの進め方を上司に教えても機能しません。この教育体系で何年かやってみるうちに、このことが明らかになってきて、教育のあり方そのものに疑問を持つようになっていきました」
加えて、経営陣からは、「うちは風通しが悪いのではないか?」、組合からも「管理職と非管理職の間に壁がある」「仕事にやらされ感を感じる」という声が挙がっていた。「結局、上司と部下の意志疎通がきちんとできなければ、人も育たず、組織風土もよくならない。ですからまず、コミュニケーションのとり方、会話の仕方から教える必要があるという結論に達しました」(小栗氏)