巻頭インタビュー 私の人材教育論 企業成長の要は人材に 育成の要は創業の原点にあり
医療・福祉の現場を総合的にサポートするワタキューセイモア。
医療施設向けリネンサプライや給食などで、圧倒的なシェアを持つ。
同社が展開する全ての事業は、人が支えるものであり、よって事業展開も、人材の質がカギとなる。
そこで同社では人材育成、特に新入社員の段階で1年もの間、社会人としての「基本」と、会社の「基本方針」を身につける機会と時間を設けている。
2022年に1兆円企業
―創業150周年にあたる2022年には、売上高1兆円のグループ企業をめざすと宣言されています。
安道
「1兆円」という数字には正直なところ、具体的な売上構成などの裏づけはありません。ですが、根拠が全くないわけでもないのです。
医療と医薬品の提供以外の全業務―清掃、リネンサプライ、ベッドや什器などの物品提供・管理、給食の提供、人材派遣等々―を当社が担当している病院が、現時点でもいくつもあります。例えばベッド数300床ぐらいの規模の病院なら、年間売上が10億円程度になります。現時点で当社が全国で担当しているベッド数が63万床ですから、そのうちの半分の病院でそうした業務をお受けすることができれば、1兆円に届くはずです。
―病院業務をアウトソーシングする動きは、さらに加速しそうです。
安道
医療費削減は長期的に見ればやむを得ないことですから、ベッド数自体は今後先細りとなるでしょう。とはいえ当社が担当する63万床が半分になることはありえません。
一方で当社グループには、すでにご紹介した業務の他にも、病院経営に関するコンサルティングから建物の建築までをサポートする企業などを含め、傘下に40数社があり、約8万名のスタッフが揃っています。病院経営者の方々も、アウトソース先は1社にまとめられたほうが、管理がしやすいはずです。私たちとしては、そうしたこれまで積み重ねてきた活動や取り組みを、この先も進めていくことが、目標達成にまず重要だと考えています。
ただ、そうかといってじっと待っているだけでは達成できないでしょう。当社としては、中でも人材育成こそが企業成長のカギだと考え、注力しています。私たちが携わる病院や介護施設での仕事は、あらゆる局面において、必ず人が関わっているからです。
1年間、基本を叩き込む
―特に新人研修は独特なシステムで、丸1年間をかけているとのこと。
安道
2011年に本部に「一心館」という専用施設をつくり、研修を行っています。さまざまな職場に赴いての実習も行います。新卒入社の約52名が1年間、寮に入り、まさに寝食を共にして過ごします。数十人も、新入社員として研修を受けるわけですから、経営的にも、かなり思いきった投資です。
―入社後1年間を重視される理由とは。
安道
私たちは新卒入社の社員を“大学5年生”と捉えています。一人前の社会人として扱うには、彼らはあまりに未熟なのです。
何も難しいことを教え込もうとしているわけではありません。研修の一番の目的は、社会人として最低限の礼儀、しつけ、一般常識といったことです。そうして会社での業務をひと通りマスターしたら、次に英語力などを身につけてもらいたいと思います。
とりわけ私がいつも口うるさく注意しているのは、例えばお辞儀の仕方など、しつけのようなことです。