おわりに 社員に愛される会社には 「信頼」と「成長」が欠かせない
会社が社員に愛される意義
どうすれば社員に愛される会社になるのか。これは今の時代、軽視できないテーマである。人手不足なうえ人材の流動化が激しい状況においては、会社は社員に選ばれ、在籍し続けてもらうことが必要だからだ。「会社が好き」という社員の感情は何よりリテンションにつながり、また、高いモチベーションをもって意欲的に働いてもらうためにも、会社を好きでいてもらうこと、好きでいてもらえる会社であり続けることは、重要だといえる。
今回紹介した3社は、いずれも社員の会社へのエンゲージメントが高く、社員が生き生き働いているといわれる企業である。「日本でいちばん大切にしたい会社」「働きがいのある会社」といったランキングにも名を連ね、国内外でその価値や魅力を評価されている。
社員に愛される企業の取り組み
まずは3社の事例から、社員が「会社を好き」になる要素を振り返ってみたい。
CASE 1伊那食品工業会社 存在目的は“社員の幸せのため”
伊那食品工業では、「いい会社をつくりましょう」を社是に掲げ、「会社が存在する目的は、社員が幸せになること」と断言する。それが表れているのが、「伊那食ファミリー」、つまり「社員は家族」という考え方だ。家族だから社員を信用するのは当たり前で、家族が将来に希望をもって安心して働ける環境をつくっている。たとえば賃金制度が年功序列なのは、家族なので差をつける必要がないから。収入は毎年2%アップをキープし、研究開発に力を入れるのは、末広がりの成長に希望をもって働いてほしいからだ。快適な職場環境づくりに尽力するのも、各種手当てを充実させるのも、「家族だから当然」という。