CASE2 太陽パーツ|失敗をノウハウに! 挑戦の先には成功と学びがある 失敗を恐れない「大失敗賞」 城岡正志氏 太陽パーツ 代表取締役社長
部品メーカーの太陽パーツでは半期に一度、組織的な学びにつながる失敗経験をした社員に「大失敗賞」を与え表彰する。
本来なら叱責対象となってもおかしくないところを、称賛するのはなぜなのか。
賞を設けた経緯と運用について、社長の城岡正志氏に聞いた。
[取材・文]=たなべやすこ [写真]=太陽パーツ提供
大失敗を笑って流しその経験をノウハウにする
大阪に本社を構え、部品製造と住宅建材の設計・製造を行う太陽パーツ。多彩で高度な加工技術を誇り、商品の数は2万種類を越える。業界を問わず多くの取引実績がある同社は、社員表彰に「大失敗賞」を設けることでも知られている。このユニークな賞について、代表取締役社長の城岡正志氏は次のように語る。
「ちょっとした失敗ではダメ。“大”とつく以上、『嘘やろ!?』と思わずのけぞってしまうような失敗。さらに本人が『このまま失敗で終わらせられない。これをノウハウにして絶対リカバリーするぞ!』と思えるかどうかというところにフォーカスをしています」(城岡氏、以下同)
過去の受賞例には、会社に数千万円級の大きな損失をもたらした失敗がズラリと並ぶ。にもかかわらず、同社は創業以来、一度も赤字を計上したことがなく、右肩上がりの成長を見せる優良企業である。
なぜ失敗を表彰するのだろうか。
「賞の創設は1998年、自社商品の開発がきっかけでした。社員2人が発案し、カー用品の企画から製造、流通までを自分たちで手掛けたのです。クライアントワークばかりだった弊社にとって、新たな挑戦でした」
幸いハンドルカバーや芳香剤、ワイパーアクセサリーを大手専門店に持ち込むと、反応は上々。すぐに店舗に並べてもらえたこともあり、ラインを強化して増産に臨んだ。ところが半年後に悲劇が訪れる。取引先からの返品が相次いだのだ。
「このとき初めて“棚貸し”という、小売特有のシステムを理解したんです」
返品分に加えて増産で抱えた在庫も処理しきれず、最終的に5,000万円もの損失を計上した。
当時の同社の経営をも揺るがすダメージとなり、従業員への賞与支給も見送られた。社内はお通夜のようにどんよりとした雰囲気に包まれ、何より発案者の2人からは覇気が失せてしまった。かつての勢いは見る影もない。
この状況を憂慮したのは、先代社長で現会長の城岡陽志氏だった。
「先代は、『失敗で落ち込まず、この経験をノウハウとして積み上げ、前に進もう』と、社員表彰に大失敗賞を設けました」
選考のポイントは失敗で何を学んだか
当時の大失敗賞の表彰はいわば特別対応で、そのとき限りのつもりだった。だが始めてみれば25年たった現在も続く、名物行事となった。太陽パーツではなぜ、“しでかした”社員を表彰し続けるのか。