第7回 ほぼ日の学校長・河野通和さん 「古典の学校」を編集する 河野通和氏 ほぼ日の学校長|寺田佳子氏 インストラクショナルデザイナー
人は学べる。いくつになっても、どんな職業でも。
学びによって成長を遂げる人々の軌跡と奇跡を探ります。
「ほぼ日」が運営する学校があるのを知っていますか?
その名も「ほぼ日の学校」。一見難しそうな「古典」というテーマを、個性豊かな講師たちが情熱たっぷりに教えてくれます。
このユニークな学校の学校長は、これまでに数々の雑誌の編集長を務めてきた、河野通和さん。
遊び心満載のオフィスで、講義のつくり方を伺いました。
01 いつか本に夢中になるはず
「生きるべきか、死ぬべきか、それが問題だ」や、「ああ、ロミオ、ロミオ、どうしてあなたはロミオなの」というセリフは辛うじて覚えていたけれど、シェイクスピアの戯曲をじっくり読むことをすっかり忘れていた私が、「シェイクスピアって、こんなに面白かったっけ?」とまるで初恋の人に再会したときの、うれしいような恥ずかしいようなドキドキを味わったのが、「ほぼ日の学校」の第1回「シェイクスピア講座2018」だった。歌舞伎、万葉集、ダーウィンと続くその「古典を学ぶ」学校をプロデュースする学校長が今回のお相手、河野通和さんだ。
河野さんといえば、中央公論新社の『婦人公論』、『中央公論』、新潮社の『考える人』の編集長を歴任し、錚々たる作家や学者、文化人と交流してきた人である。きっと子どものころから“本の虫”だったに違いないと思いきや、
「中学・高校時代はサッカーに熱中して、将来は全日本の監督になりたいなぁ、なんて思っていました」というから意外である。なんでも、読書感想文も「一番薄い本」が選ぶ基準だったとか。
ただ、「いつか夢中になって本を読む季節が来るはず」という予感があったというから、河野さんにとって本は、“まだ見ぬ恋人”のような存在だったのかもしれない。
02 “変わった同級生”が集まる学科
その河野さんが東京大学に現役合格するや、待ってましたとばかりに高校のサッカー部の先輩から「とにかく練習に来いっ」と声がかかった。
いそいそとピッチに立ったはいいが、受験勉強で体がすっかりなまっていたのか、それとも初めてのひとり暮らしのストレスからか、体調を崩してひと月の入院をするはめに。
そして、病院のベッドでぼんやりつぶやいたのが、
「大学でサッカーを続けるのは、難しいかもなぁ……」
悔しい想いももちろんあっただろうが、「夢中になって本を読む季節」の扉を大きく開けるきっかけにもなったはずである。聞きかじりのシェイクスピアの言葉を借りれば、「運命とは、最もふさわしい場所へと貴方の魂を運ぶ」のだから。
ところで、ロシア文学科を専攻したのには、どんなこだわりが?