巻頭インタビュー 私の人材教育論 視野の拡大と課題解決を 同時に行う教育で 考え企画し実行する組織へ
森グループを源流とし、60 年の長きにわたり、都心部の大型開発や各地のリゾート地でホテルやリゾート事業を行ってきた森トラストグループ。
2016 年6月に、森章氏(現会長)から社長を引き継いだのが、森章氏の長女の伊達美和子氏だ。
伊達氏は、ともすればトップダウンになりがちな組織の体質を変えるべく、新しい知識と方法論を取り入れる教育に自ら注力している。その思いと具体策とは。
ホテル事業は今後も成長が見込める
―2年前に現会長のお父様(森章氏)からバトンを受けて、社長に就任。中長期ビジョン「Advance2027」を発表しました。
伊達(美和子氏、以下伊達)
中長期ビジョンの発表は、森トラストとして初めての取り組みになります。会長は、会社の目的や目標は時代・環境に合わせて常に変化するという考え方。いったん目標を定めると、それに縛られ、時代・環境の変化に即応できる柔軟性が奪われることを危惧していたからです。
私も基本的に同じ考えで、踏襲していきますが、会社がある程度大きくなった今は、何かしら目標があったほうが社員も仕事をしやすいと考えました。そこで1 ~ 3年先に絶対達成しなければならない固い目標ではなく、「Advance2027」として、十数年先の緩やかな目標を掲げることにしました。
―では、10数年先を見据えた経営戦略の、具体的なところを教えてください。
伊達
我が社には事業の柱が3つあります。最も安定的なのはオフィス事業で、これは無理をせずに伸ばしていきます。2つめの柱であるホテル事業は成長分野なので、今後も加速させます。さらにもう一つ先の成長を見据えるという意味で3つめの柱に据えたのが投資事業です。これにはドメスティックだけでなく海外への投資、スタートアップへの投資、M&Aなどが含まれます。この3つの柱を育てていくにあたっての中間目標が「Advance2027」という位置づけです。
―都心で3件、地方で14件の新規ホテル開発を計画するなど、ホテル事業に積極的です。
伊達
ホテル業界はバブル崩壊後、東京以外ほとんど投資されない状況が続いていました。しかし、インバウンドという新しいマーケットが現れたことで、現在は一転して拡大傾向にあります。我が社は十数年前から、業界に先駆ける形で都心に高級外資系ホテルを誘致し、さらに地方都市やリゾート地にも広げてきました。それが今ちょうど良い形で実を結んでいます。
市場の拡大はまだこれからです。世界の国際旅行の人口は毎年2~3%伸びており、そのシェアを取ることでさらに伸びると捉えています。ホテル事業は先行投資型なので、ニーズのあるところに投資をするというより、新たなニーズを生み出すために投資をします。お客様がここに行きたいという価値ある場所をつくることができれば、さらなる成長も期待できるでしょう。
―安定的な成長を見込むオフィス事業でも、新しい挑戦は行っていくのでしょうか。
伊達
オフィス事業は、きちんと資金調達して土地を入手し、正しい商品をつくることが大事です。ただ単に、箱があればテナントが入るという時代ではありません。オフィス空間の在り方も変化しています。今は個人の生産性をどうやって高めるのかが重要なテーマです。テナントさん自身がそうした空間をつくりやすいように、私たちがどのようなビルをつくるのか。そこにはクリエイティブな要素が求められるでしょう。