INTERVIEW2 監督はモチベーター 細やかな気遣いとコミュニケーションで 女性のチーム力を引き出す 眞鍋政義氏 株式会社姫路ヴィクトリーナ 取締役球団オーナー/前女子バレーボール日本代表監督
ロンドン五輪で、日本女子バレーに28年ぶりのメダルをもたらした前女子バレーボール日本代表監督の眞鍋政義氏。
女子選手と男子選手の違いや、チームの力を最大限に引き出すマネジメント技術などについて聞いた。
女子バレーの世界にカルチャーショック
―眞鍋さんは、日本女子バレーボールの監督として2012年のロンドン五輪で銅メダル、2016年のリオ五輪で5位という輝かしい結果を残されました。選手の指導や育成で大事にしてきたことは何でしょうか。
眞鍋政義氏(以下、敬称略)
一言でいえば、コミュニケーションに尽きますね。特に、男性である私が女子選手たちを指導し、世界と戦えるチームにまとめ上げるには、女性の特性を理解したうえでのコミュニケーションやマネジメントが不可欠です。
私は男子チームの監督経験もありますが、女子チームにおけるコミュニケーションやマネジメントは、まったく違う。それを実感したのは、久光製薬スプリングスの監督として、41歳で初めて女子バレーボールの世界に飛び込んだときでした。就任3日後に行った面談で、ある選手から「監督は、なぜ昨日の練習でA 選手にだけ10分間個人指導をしていたのですか?」と言われたのです。男子選手なら、弱点のある選手を個人的に指導していても、気にも留めません。ところが女子選手のなかには、それをえこひいきだと思う人もいる。そのときは「あぁ、ややこしいところにきてしまった」と思いましたね(笑)。
―そこからどのように女子チームを指導していったのでしょう。
眞鍋
女子チームをまとめていくには、細やかな気配りや公平性が重要だと気づきました。皆さん、「眞鍋=iPadを片手に指揮を執る『データバレー』」のイメージが強いと思いますが、あれも、元をたどれば女性の公平性に配慮したことが始まりなのです。
バレーボールはデータを活用するスポーツですが、通常それらのデータは相手チームを分析するために使われます。しかし、私は、それを選手のパフォーマンスの分析に活用することにしたのです。具体的には、毎日の練習で各選手のスパイク決定率、サーブ効果率などのあらゆるデータを取り、翌日の練習のときにそれらの数字を全部貼り出しました。そして数字のいい選手からレギュラーにすると明言しました。数字は正直ですから、公平性も満たせると考えたのです。
―データバレーの導入は、皆に納得感をもってもらうための気遣いがきっかけとも言えそうですね。しかし、選手からは受け入れられたのでしょうか。
眞鍋
最初は不評を買いましたよ。それでも数字の意味するところを理解できるようになれば、勝つために何をすればいいのかチームで共有できるようになります。もちろん、数字は万能ではありません。チームへの貢献や人柄など、数字で表れないものもあるので、すべての選手に目を配るようにしていました。