CASE1 「ホラクラシー」から考える組織 ダイヤモンドメディア|鍵は透明性、流動性、開放性 組織全体が勝手に育つ 自然にまかせる経営のしくみ 武井浩三氏 ダイヤモンドメディア 代表取締役
上司や部下はいない、働き方は自由、給与は話しあいで決まる―
ダイヤモンドメディアでは、“ 管理しない経営” を徹底する。その意義とは。
子どものように組織を育てる
不動産ソリューションを手掛けるダイヤモンドメディアは、設立時から「管理しない経営」を貫く。創業者の1人で、代表取締役の武井浩三氏は「我々が実践しているのは、『自然(じねん)経営』というスタイル。かつては“ホラクラシー(Holacracy)”という言葉を使っていたのですが、米国由来の考えでニュアンスが異なるので、今はよび方を変えています」と説明する。
同社の運営のポイントをいくつか挙げてみよう。
ポイント❶組織図がなく、職階もない
ダイヤモンドメディアには、組織図自体がない。事業を進めるチームは存在するが、従業員はどこかのチームの専属にならなければいけないルールはない。代表や役員も、毎年選挙と話しあいで決められる。
上司や部下もいないため、命令することもされることもない。それぞれで考えてプロジェクトを遂行する。リーダーや取りまとめなどの役割も、チームのなかで自然発生的に決まる。
逆をいえば、自分からアクションを起こさなければ仕事は生まれず、 “ただそこにいる人”になってしまうということだ。入社したものの、「何をしたらよいのかわからない!」と数週間で退職してしまった人もいるという。
ポイント❷働く場所や時間を問わない
滞りなく仕事を進められるのなら、いつ出社して、いつ帰っても構わない。定時の概念がないのである。それどころか、オフィスに限らずどこで仕事をしても構わない。
だから平日に休む人もいるし、深夜に自宅で集中的に作業するエンジニアもいる。必然的にパラレルキャリアのメンバーが増えるなか、会社との距離感を自身で判断しながら、他の仕事を進める社員も多い。
ポイント❸給料は自分たちで決める
全従業員による「お金の使い方会議」が、半年に一度行われ、そこで全員の給与についても議論する。それぞれの働きぶりと支払われる報酬のバランスを調整するのである。
給与は基本的に「基本給」+「実力給」+「諸手当」で決まるが、労働時間も短期間に上げた成果も加味しない。個人的な意見も反映させない。あくまで労働市場の相場と、社内におけるその人のバリューを見る。
具体的には、「外部に同じ仕事を委託するといくらになるか」「同じ仕事をしている他の社員と比べ、実力レベルはどのくらいか」などを検討しながら、みんなで給与相場を整えていく。だれがどんな仕事をしていていくらもらっているのか、常に一目瞭然となるしくみといえよう。