HR TREND KEYWORD 2019│組織│自律型組織 上司の役割は、支援型リーダー 社員が自律的に働く組織に求められる要件とは 小杉俊哉氏 THS経営組織研究所 代表社員/慶應義塾大学大学院 理工学研究科 特任教授
「ホラクラシー」「ティール組織」といった言葉が登場し、「自律型組織」に対する関心が高まっている。20年前から、組織における個々の自律の重要性を提唱してきた小杉俊哉教授に、なぜ今、自律型組織が求められているのか聞いた。
「自律型組織」とは
新しい組織の在り方として、「ホラクラシー」や「ティール組織」といった「自律型組織」に注目が集まっている。今までの企業組織の在り方を根底から覆す概念であるかのように喧伝されているが、実際のところはどうなのか。多くの日本企業が社員の「自律」に見向きもしなかった20年前から、その重要性を説いてきた小杉俊哉氏は、そもそもの前提として、「自律」という言葉に対する認識の甘さを指摘する。
「不思議なことに、専門家でも『自立』と『自律』を混同して使っていますが、この2つはまったく別のものです。『自立』は、上司や親から自立するというように、一人前になること。誰かの庇護の下から独り立ちした状態であり、組織に所属する全員が到達すべき第1段階です。一方、『自律』は、まったく次元が違い、自分で仕事をつくり出し、結果まで含めて自らの責任において行う、相当レベルの高い状態です」(小杉俊哉氏、以下同)
「自律型組織」とは、こうした自律した人材が主体となって動かしている組織のこと。対極にあるのが、上司が管理し、指示・命令によって動く組織だ。会社では通常、役割を与えられて動くので、自律型組織ではないと思うかもしれないが、小杉氏は「きっかけは何でもいい」と言う。
「上司からの指示が始まりでも、自分の意思でその仕事を受け、自分で責任を負う意識をもつ。つまり、『言われたからやっている』という他律他責ではなく、“自分ごと”にするということ。これが『自律』の本質です」
大事なのは、一人ひとりが「自律」の意識をもち、行動していること。組織形態について「こうでなければならない」という決まりはなく、会社ごとにカラーがあってよいという。
「『ティール組織』は、わかりやすく示したので流行りましたが、目新しいことはありません。『ホラクラシー』や少し前に流行った『U 理論』にしても、基本的に一人ひとりが自律的に動き、ともに何かを生み出していく組織です」