Part2 識者に聞く!② OPINION2 質の高い女性リーダー育成のために 女性たちの意識改革の前に 日本がやるべきこと
採用時点では男女半々に近いのに、役職が上がるほど女性が少なくなるのはなぜか。
女性リーダーのパイプラインを築くうえで、日本企業のどこに問題があるのか―。
海外の事情にも詳しい大沢真知子教授に、事例を交えながら、
企業、男性上司、女性自身のそれぞれに求められる対応を聞いた。
不足しているのは量か質か
企業にとって女性活躍が極めて重要という認識は十分広まっている。しかし、もう少し議論を深めなければならないのは、女性活躍を進めるのは、労働力不足への対応なのか、「人材(=質)不足」への対応なのかという点だ。
前者、つまり生産年齢人口の減少を補うための“労働力”の問題だとすると、既に行われている通り、ワークライフバランスの取れる働き方を可能にすることが有効である。しかし、後者の、質を伴った“人材”が不足しているのだとすると、ワークライフバランスへの対応に加えて、女性の育成を早期の段階から考える必要がある。
そして、質の高い女性リーダーを長期的に増やすために、①“普通”の女性が活躍できる社風をつくるうえで、男性を含めた社内の意識を変え、②働き方を変え、③女性たち自身の意識を変えることである。
“普通”の女性を引き上げる
まず、日本の大手企業は、女性リーダー育成において矛盾を抱えている。次世代リーダー育成の重要性が叫ばれる中、自社内の多くの女性たちがその対象ではない。コース別人事制度の中、一般職=補助職として最初から中核人材と区別され、昇進・昇格の可能性が限られたコースに位置づけられているからだ。
少数ながら存在する総合職の女性たちも、長時間労働を前提とした男性中心の働き方の中で、「男性並みに働くのは無理」と、キャリアアップや仕事に対する意欲を抑えてしまう。これでは、女性リーダーの人材供給パイプが太くなるわけがない。
女性リーダーを増やすには、一般職も射程に入れて育成する必要がある。そのために企業は、人事制度を一般職と総合職に分けるコース別人事管理制度を見直す時期に来ているのではないか。
一例としては、一般職と総合職を統合し、転勤がある総合職と転勤がない総合職に分けたところもある。その結果、女性のキャリアの幅も広がり、管理職を射程に入れて働く女性を増やすことになった。
また、ある外資系企業では、一般職を専門職と位置づけているところもある。初期の段階から専門的な仕事を任せ、次のステップに上がるために、どのようなスキルを磨く必要があるのかが明確になっている。その結果、上司のアドバイスを受けながら自分のペースでキャリアを築いていくことができる。この、キャリアパスが“見える化”されていることは、個人の意欲を高め、ライフステージに合わせて自分のぺースでキャリアを積み重ねることができるというメリットがある。