真のグローバル企業を目指して ISSUE3 現在進行形の企業の取り組み カルビー 事業を担う経営視点の醸成は段階的、かつ “外”を意識した育成が鍵 小池美帆氏 カルビー株式会社 人事総務本部 人財・組織開発課 課長
柔軟な人材登用や画期的な人事施策で話題となる、大手食品会社のカルビー。
注目を集めるのは、戦略と事業成長がリンクしているからである。
成長の要となる事業リーダーは、どのようにして育まれているのか。
●背景 グローバル基準の育成が急務
日本国内のスナック菓子市場の規模は、およそ4,200億円(全日本菓子協会調べ、2017年)。その半数以上のシェアを占めるのがカルビーである。特にここ10年の同社の成長は目覚ましく、その原動力である働き方改革はたびたび話題となった。
したがって事業リーダーの育成にも画期的な秘策があるのかと思いきや、人事総務本部人財・組織開発課課長の小池美帆氏の答えは「新任管理職向けの階層別研修はありましたが、事業リーダーについては特別な施策はこれまで設けていませんでした」という意外なものだった。しかし、同社はこの現状を成長機会や課題と捉えている。
「国内市場だけに留まるのであれば、これまで通りでよいのかもしれません。しかし私たちは、グローバルを視野に入れています。今のままではグローバル企業の事業責任者と対峙しても、力負けしてしまうでしょう。グローバル基準で仕事を動かせるリーダーの育成が求められているのです」(小池氏、以下同)
では、同社が考えるこれからの事業リーダー像とは。
「どの役職においても共通しているのが、サーバントリーダーシップともいえるような力を発揮できる人です。自身が先頭に立ってぐいぐい引っ張っていくというよりも、メンバーを尊重してサポートに回りつつ、チームの調和を図れるような資質ですね。
加えて本部長や部長クラスであれば、『財務』『組織』『戦略』の3つの視点を持ち合わせていることです(図)」
ビジネスを行うにあたり、お金の流れを押さえておくのは大前提だが、それに加えて、全社的な視野で自分のチームの役割を客観的に捉える力や、社会環境や市場の変化を敏感にキャッチし、中長期的に事業の戦略や運営を考えられる力も重要である。まさに次代の経営者たる素養を求めているのである。
「当社は、事業責任者に原則全ての権限を委ねています。言ってみれば、1つの会社を丸ごと任せているようなものです。ですから、経営者と同じセンスを必要とします」
全体を統括する事業本部長・部長クラスに対し、実務を回していく課長に期待することは。
「『戦略』については部長クラスと同様なのですが、そこに『ビジョンの具現化』『メンバー育成』『業務遂行力』が加わると考えています」
チームが全社ビジョンをいかに具現化していくかを考え、実行しつつ、メンバーの成長をサポートし、自分の業務とマネジメントを両立させる。そうした力が課長レベルには求められているという。