J.H.倶楽部

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Learning Design 2020年11月刊

成長の仕掛け人 第14回 会社は生き物。 多様な人材が、 仕事をつうじて 成長する場を目指す

暮らしを支えるインフラ事業として「安心・安全・信頼」を追求する東京ガス。
謙虚な姿勢のなかに、熱い使命感を宿す人事部長・吉村恒氏に、ラグビーで学んだチームワークや、これからの組織と多様性について話を聞いた。

Profile
吉村 恒 (よしむら こう)氏
東京ガス 人事部長
1990年東京ガス入社。7年の総務経験を経て、1997年よりチャネルの販売助成を担うリビング営業部に異動。
以降、同部門を中心にマネジメント経験を重ね、2019年4月より現職。

Company Profile
東京ガス株式会社
1885年創業。主に首都圏を営業区域とするガス会社。
都市ガス事業として国内最大手であり、都市ガス供給のほか、電力の販売など、首都圏のエネルギーインフラを支える。
資本金:1,418億円
連結従業員数:1万6,591人(2020年3月31日現在)
連結売上高:1兆9,252億3,500万円(2020年3月期)

[取材・文]=平林謙治  [写真]=中山博敬

チームワークの本質を学んだ日々

1987年12月6日、大雪の東京・国立競技場で行われた大学ラグビー、早稲田大学vs.明治大学の一戦は、ファンの間で今も「雪の早明戦」と語り継がれる伝説の名勝負となった。ノーサイドの瞬間、勝利に沸く早大フィフティーンの輪の中にいたのが現在、東京ガスで人事部長を務める吉村恒氏である。

驚いたことに、吉村氏は高校までラグビー部に所属したことがない。競技経験ゼロで、強豪校出身者が集う早大ラグビー部の門を叩いたという異色のラガーマンだ。

「もともと体育教師になりたくて、何かスポーツをやっておいたほうがいいだろうと、深く考えずに入部したんです。継続できたのは仲間や指導者に恵まれたから。早明戦も交代で入った程度ですし、活躍なんてしていませんよ」と笑う吉村氏。謙虚で、過去を誇るようなところは微塵もない。

ただし、ラグビーを語る言葉の端々には、競技から得たこと、学んだことへの感謝が滲む。それは、「One for All, All for One」の言葉に象徴される個と組織の関係、チームワークの重要性について、である。「あくまで私の解釈ですが……」と断ったうえで、吉村氏は切り出した。

「ラグビーと出会うまでは、チームプレーというとお互いに助けあうとか、仲間をカバーするといったようなことだと考えていたのですが、そうじゃない。チームのためにまず為すべきことは、各自が他人に頼らず、自分の責任を果たすことだと、ラグビーをつうじて学びました。たとえば、相手をタックルで止めなければならないとき、眼前に大きな選手が迫ってきたら、正直怖い。でも、自分が責任から逃げたら味方により負担がかかってしまいます。怖くても、痛くても、まず自分が体を当てて、その場の責任を果たすこと。そのうえで、仲間をサポートする。この順番が大切だと学びました。『どうせ吉村は逃げるんだろう……』と思われたら、大切なチームワークにひびが入ってしまいますし、そもそもメンバーに選ばれませんからね」

仕事もラグビーも一流を目指して

先述のとおり教職志望だったが、競技を続けたい思いや家族の勧めもあって、卒業後は東京ガスへ。同社ラグビー部でも選手として活躍し、現役引退後は部長や総務などマネジメントの立場でチームを支えた。

東京ガスラグビー部が掲げるモットーは「仕事もラグビーも両立し、一流を目指す」

「うちは部の発足以来、一流のアマチュアチームであることに矜持をもち、こだわり続けてきました」と吉村氏は語る。

「特に現場で働く部員は必ずしも定時で上がれるわけではありません。一同好会であるラグビー部の活動に快く送り出してもらうには、一緒に働く同僚から認められなければならない。常日頃の仕事ぶりが問われるわけです。一般の社員以上に自分を厳しく律しないといけません」

会社に認められ、社員に応援してもらうためには、同好会とはいえ、成績も求められるだろう。「当然、勝利を目指しています」と吉村氏も力を込める。

「でも、それは会社のためにというより、自分たちのため。自分たちが勝ちたいから努力しているんです。勝たないとスポーツは面白くないし、貴重な時間を犠牲にしてまで自分は何をしているのかと否定的に考えてしまう。勝てないと、どうしても他人のせい、仲間のせい、会社のせいと、いわゆる他責の悪循環に陥りやすい。これは仕事にもつうじることでしょう。勝利への責任は自分自身の中にある。その責任を果たさなければチームにいる意味もありません」

ラグビーとの出会いが、吉村氏の根幹を形づくったことは間違いない。しかし一方で、来し方を振り返り、「ラグビーだけでは今の自分はなかった」とも語る。

“会社は生き物”と異動で実感

「大学のころはラグビーのこと以外、何も知らないダメな学生でした。そんな自分が、少し成長できたかなと実感できるのは、まさに会社や仕事のおかげ。仕事により生活でき、仲間も増え、成長できる。こんなにありがたいことはありません」

そんな吉村氏のキャリアは、同社事業所の総務部から始まった。東京ガスには、エリアごとに家庭向けのサービス拠点がある。その事業所で働く従業員の勤怠管理や安全管理、福利厚生など、庶務的な業務を7年ほど続けた後、1997年に中央事業本部・中央リビング営業部へ異動。総務から営業へ、仕事内容も大きく変わった。

リビング営業部とは、各エリアにある様々なチャネル(家庭用のガス検針、設備点検、移転時のガス開通・閉鎖、ガス工事などの業務を委託する地元の協力会社)をつうじて、ガス器具などの販売促進を担うセクションである。チャネル営業なので、直接消費者と接するわけではないが、吉村氏にとっては、同部への異動が大きな転機になったという。

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