J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2015年08月号

CASE 3 カルビー 自ら手を挙げる女性が増えていく 挑戦できる土俵を整え、仕組みと理解で支える

「3年後のキャリアが思い描けますか?」
この質問に対し、「描ける」と回答した女性はほぼ10人に1人だった―
そんなカルビーが大きな変化を遂げている。
時短勤務役員が登場したばかりでなく、時短勤務の従業員が独自チームを立ち上げるなど、幅広い層で女性が輝く、同社の取り組みとは。

高橋文子 氏 人事総務本部 人事総務部 部長 ダイバーシティ委員会 委員長
カルビー
1949 年広島で設立。自然の恵みを大切に活かし、おいしさと楽しさを創造し、人々の健やかな暮らしに貢献することを目標に、スナック菓子の製造販売を手がける。主力商品は「ポテトチップス」「かっぱえびせん」「じゃがりこ」「ベジップス」「じゃがビー」「フルグラ」など。
資本金:119億7500万円(2015年3月末現在)、連結売上高:2221億5000万円(2015年3月期)、連結従業員数:3477人(2015年3月末現在)
[取材・文]=中津川 詔子 [写真]=編集部

● 推進のきっかけ 見えない「遅れ」に気づく

2015 年3月、経済産業省主催の「ダイバーシティ経営企業100 選」を受賞。さらに「女性活躍推進に優れた企業」として、経済産業省・東京証券取引所が共同で選定する「なでしこ銘柄」に2014、2015年と2年連続で選ばれたカルビー。

だが6 年前、ジョンソン・エンド・ジョンソンから松本 晃氏を会長兼CEOとして迎えた当時、女性管理職比率はわずか5.9%だった。これを見た松本氏は「この会社、1世紀遅れているね」と言ったという。

メディアでも取り上げられ、話題になった一言だが、現在ダイバーシティ委員会委員長を務める高橋文子氏は「言われたほうは自覚がなく、『なんで?』という感じでしたね」と苦笑いする。

「当社はもともと創業家が経営してきたこともあり、家族的な社風が濃厚なのです。男性上司は女性部下に優しく、『育児休暇、どんどん取って』『時短勤務、どうぞどうぞ』という雰囲気。特に女性の発言力が弱いということもない。自分たちが差別されているなんて考えてもみませんでした」(高橋氏)

しかし、結婚・出産した女性が職場復帰した後、従前と同じパフォーマンスを発揮できる仕組みは当時、まだなかった。例えば、工場でオペレーターとして働いていた女性が産後、育児短時間勤務を取る場合、清掃などの間接業務に担当変更するしかないケースが多々あったという。

「そんな状況を前にしても、みんな『フルタイムで働けない以上、仕方がないよね』と考えていた。ミスマッチをミスマッチと捉え、改善しようという動きはありませんでした」

松本氏の一声をきっかけに女性の力を引き出すチャンスを失っていたことに気づいた同社は、一大改革に乗り出した。

● 具体策1 3つの部会でトータルに改革

2010 年4月、社長直轄の組織として「ダイバーシティ委員会」が設立された。当時のメンバーは、全国のグループ会社から集まった15人(女性12人、男性3人)。

何から手を付けていいか、当初は戸惑っていたメンバーたちだったが、まずは「ダイバーシティに関する意識調査をする」、「既存の両立支援制度の周知を徹底する」、「イベントを開催する」の3つを目標に掲げ、それぞれについて、①「アンケート部会」、②「ハンドブック部会」、③「イベント部会」をつくり、活動をスタートした。

アンケート部会の調査で得た結果は、松本会長の言葉を裏づけるものだった。「3年後のキャリアが思い描けますか?」という質問を全従業員に行ったところ、20 代以上の男性の約3割が「描ける」と回答したのに対し、女性は1割程度にとどまったのだ。キャリアの展望について、ポジティブに捉えていない女性の割合が多いことが判明した(図1)。

一方、ハンドブック部会では、『両立支援制度ハンドブック(D-BOOK)』をまとめ、全従業員に配布した。自社の育児休業や短時間勤務などの制度を把握していない従業員は意外と多い。まずは制度を知り、キャリアを考えるうえでの土台にしてもらおうと試みた。

イベント部会では、2010 年11月に大掛かりなイベント「ダイバーシティフォーラム 2010」を開催した。

「高級ホテルを会場に、約400人の従業員を集めました。米・フォーブス誌『世界で最も影響力のある女性100人』(2011年)にも選ばれた、ペプシコ社ユームラン・ベバ氏などが登場すると、かなりの反響がありました。会社が女性のキャリア開発に本気で取り組んでいることをアピールできたと思います」

この時、発信された「女性の活躍なしにカルビーの成長はない」という、松本会長の強烈なメッセージも、従業員の胸に深く刻まれたという。

以来、毎年11月をダイバーシティ推進月間とし、同イベントは継続的に実施している。

● 具体策2 「キャリア研修」で意識改革

翌2011年には、先述のダイバーシティ委員会のメンバーを約半数入れ替えた。新しい空気を入れ続けなければ、という意識からだ(※委員長も2 年ごとに交代)。「工場部会」と「キャリア支援部会」を新設。「キャリア支援部会」の主導で「明日へつなげる自分のチカラ発見講座」(※現在は「チカラ講座」と改称)というキャリア研修を行った。「女性限定、1泊2日の研修です。これまでのキャリアを見つめ、どんな時にモチベーションが上がったか、あるいは下がったかを振り返る。そのうえで、自分の将来を見据え、将来のキャリアパスを考えるように促すものです」

2 年連続で実施し、各回約80 名が自発的に参加。「仕事へのモチベーションが改めて湧いてきた」「キャリアを前向きに考えられた」という声が聞かれるようになった。なお、この取り組みは、翌年から男性の参加者も交え、行われている。

さらに、本社の女性管理職のネットワークを強化する目的で、AGN(アネゴ・ネットワーク=ANEGO NETWORK)という交流会も行った。

「カルビーの女性管理職は、経理ならずっと経理、商品なら商品と、ひとつの畑を歩んできた人が多く、いざという時、相談相手が限られるのが弱みでした。そこで、部門を横断した交流会を開催。10人くらいの少人数でお互い情報交換し、学び合える場をつくりました」

異業種から転職した上級執行役員にも声をかけ、ビジネスやマネジメントについて語ってもらう機会も設けた。会が終われば恒例の飲み会を開く。こうして、男女や部門、年齢層の垣根を取り払うことで、女性たちの視野が広がり、キャリアへの意識に変化が生まれていった。

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