J.H.倶楽部

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Learning Design 2019年11月刊

私のリーダー論 まちづくりは人づくり。 個性や得意分野、可能性を 最大限に引き出したい

総合デベロッパーとして、不動産を軸にしながらも新しいビジネスにも意欲的に取り組む三菱地所。
時代の要請や社会の課題に対して、魅力あるまちづくりに取り組むために、どのような人財が求められるのか。
人事部門で長年の経験をもつ吉田淳一社長に、社員一人ひとりが生き生きと働き、活躍するための人財育成論を聞いた。

吉田淳一(よしだ じゅんいち)氏
三菱地所 執行役社長

生年月日 1958年5月26日
出身校 東京大学法学部
主な経歴
1982年 三菱地所 入社
2007年 人事企画部長
2009年 人事部長
2011年 ビルアセット業務部長
2012年 執行役員 ビルアセット業務部長
2014年 常務執行役員
2016年 取締役 兼 執行役常務
2017年 取締役 兼 代表執行役 執行役社長

現在に至る

企業プロフィール
三菱地所株式会社
設立は1937年。「まちづくりを通じた社会への貢献」を基本使命に、東京・丸の内に代表されるオフィスや商業施設の開発・賃貸・運営管理、住宅の開発・分譲、さらには設計監理や不動産仲介、海外事業などを手掛ける。
資本金: 1,421億4,796万円(2019年5月現在)
連結売上高: 1兆2,633億円(2019年3月期)
連結従業員数: 9,439名、単体:899名(2019年3月31日現在)

取材・文/谷口梨花 写真/中山博敬

まちも人も、いろんな個性があった方が面白い

─吉田社長は人事部門で長年の経験をおもちです。御社の求める人財の素養についてお聞かせください。

吉田淳一氏(以下、敬称略)

我々総合デベロッパーの使命は、まちづくりを通じて社会に貢献することです。まちの魅力が様々なように、人もそれぞれ個性や得意分野をもっています。いろんな人がいた方が組織は面白い。社員一人ひとりが、自分の個性や得意なことを生かせる分野で頑張ってもらいたいと思っています。

弊社では、求める人財の要素として「志ある人」「現場力・仕事力のある人」「誠実・公正である人」「組織で戦える人」「変革を起こす人」の5つを挙げています。とはいえ、この5項目をレーダーチャートにしたとき、きれいな五角形を描く人を求めているわけではありません。もちろんこの5つについては一定の素養をもっていてほしいですが、尖っている部分があっていい。きれいな五角形を求めすぎると、没個性になってしまいます。社員一人ひとりの尖っている部分が異なる方が、組織全体としては付加価値を生み出せると考えています。

─組織を束ねるリーダーの役割についてはどうお考えですか。

吉田

実は、私自身「リーダー」という言葉があまり好きではありません。リーダーというと、メンバーよりもその分野に精通していなければいけないと思いがちですが、弊社のような幅広い事業を展開している会社では、1人のリーダーがすべての分野を網羅するなんて不可能です。また、すべて自分が決めるというタイプのリーダーでは、まちづくりはうまくいきません。

社員一人ひとりが個性や尖った部分を仕事で発揮する経験を積み上げることで、より個性や得意分野も際立つようになり、付加価値につながると思います。社内外の異なる個性や尖った部分を最大限伸ばして活躍できるように、メンバーをコーディネートするのがリーダーの役割でしょう。具体的には、働きがいのある職場環境を整えたり、成長の阻害要因になるようなものを取り除いたりして、だれもが活躍できる好循環をつくれる人がリーダーだと思います。

必要なのはコラボするコーディネーター

─新たな中期経営計画(2018年3月期~2020年3月期)のなかで、さらなる成長に向けたビジネスモデル革新を挙げられています。人財面において今後、より強化していきたい部分は。

吉田

本質的な部分は変わりませんが、社会環境が激変するなかで、オフィスやまちに求められるものも変化しています。今後はIoT やAI といった、弊社がこれまで専門としていなかった分野でもビジネスを推進していく必要があります。自分たちの力だけでは限界があるので、ベンチャーやスタートアップ企業など、外部とコラボレートして新しいビジネスを生み出すオープンイノベーションに力を入れているところです。

その土壌づくりの1つとして、ベンチャーやスタートアップ企業と共同で新事業を生み出していくCAP(Corporate Accelerator Program)を実施しています。2年目となる2018年も200社以上から提案があり、すでに具体的なサービスとして実現しているものもあります。

また、新事業の創出を行うことを目的にした「新事業提案制度」も活発です。直近3年で70件以上の応募があり(内、3件が事業化)、外部の専門家と連携した新事業や新しい取り組みが実現しています。今後は、様々な専門家たちと良好な関係を築き、コーディネートしていく力がますます必要になってくるでしょう。

ただし、専門家を束ねるのは実際にはとても大変で、高いコーディネート能力が必要とされます。社員には修羅場も経験しながら、いろんな人の力を引き出して、より良いまちづくりをする「コーディネーター」としての力を発揮していってもらいたいと思います。

─ご自身もコーディネーターとしてお仕事されていたなかで、特に印象的なご経験を教えてください。

吉田

修羅場はしょっちゅうありましたね。特に30歳直前に担当した札幌ニュータウンの開発では、コーディネーターとしての大変さや、やりがいを味わいました。

マンションを1つ造るには、設計者、施工者、行政、近隣の方など様々な関係者と複雑な調整をしなければいけません。特に札幌ニュータウン開発では、以前に我々のマンションを購入された方が、新たなマンション開発では近隣住民の立場になるということもあり、なかなか意見がまとまらないこともありました。それでも私は三菱地所の代表者。時間をかけて丁寧に話を聞き、解決策を見いだし続けました。

─具体的にはどのように様々な利害関係者をまとめたのでしょうか。

吉田

難しかったのは、理屈でどうにかなる世界ではなかったこと。いくら理屈が通っていても、私は30歳手前の若者。60歳を過ぎた専門家に反発を買うだけです。理屈ではなく、相手の立場や意見を理解したうえで粘り強く話をし、最終的に相手に「この人のためなら」と思ってもらえるまで頑張りぬくしかありません。

難しい交渉を前に進めるために必要なのは、ある意味オーラのようなものなのかもしれません。そういったオーラをつくり上げるのも人間力のひとつ。相手がどういうタイミングでどういう言葉に反応するかを瞬時に判断し、徐々に距離を近づけていきました。これは修羅場も含めて様々な経験をして、成長していくことでしか身につけることができない力だと思います。

修羅場にもいろいろなものがありますが、仕事を通じてこれまでとは違った視点をもてたときに、成長を実感することができます。幸せなことに、我々の仕事はマンションやビル、施設など形に残るもの。そして、完成した後も人々に受け入れられ、歓迎されるように育てていく、息が長い仕事です。今は若い人たちも目の前の仕事に忙しく、振り返る間もなく次の仕事に取り掛かることが多くなっていますが、竣工や販売のタイミングなどで成長を実感してもらえるといいなと思います。

社員一人ひとりを理解する温かみのある会社であり続ける

─人事部門時代の話も聞かせてください。

吉田

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