J.H.倶楽部

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Learning Design 2019年05月刊

連載 中原淳教授のGood Teamのつくり方 第6回 立教大学ビジネス・リーダーシップ・プログラム(BLP)で検証中! 真の「チームアップの法則」とは

立教大学経営学部のビジネス・リーダーシップ・プログラム(BLP)をとおして、「チームアップ」について科学的な研究を行っている中原淳教授。研究により、どんなことが明らかにされていくのでしょう。
これまでの「チームアップ」にかかわる常識、定説の真偽や、現状まで見えてきた仮説と合わせて紹介します。

中原 淳氏(Jun Nakahara)

立教大学経営学部教授。立教大学経営学部ビジネス・リーダーシップ・プログラム(BLP)主査、立教大学経営学部リーダーシップ研究所副所長などを兼任。
東京大学教育学部卒業、大阪大学大学院人間科学研究科、メディア教育開発センター、米国・マサチューセッツ工科大学客員研究員、東京大学講師・准教授などを経て、2018年より現職。
著書に『職場学習論』、『経営学習論』(共に東京大学出版会)、『研修開発入門』(ダイヤモンド社)、『駆け出しマネジャーの成長論』(中央公論新社)など多数。

研究の詳細は、Blog:NAKAHARA-LAB.NET
(http://www.nakahara-lab.net/)。Twitter ID : nakaharajun

取材・文/井上 佐保子 写真/宇佐美 利明

なぜいま、チームアップなのか

私が東大から立教大学経営学部に移籍し、1年がたちました。連載初回でもご紹介したように、この大学では、学生たちが4~5人のチームをつくり、企業のビジネス課題に取り組む「ビジネス・リーダーシップ・プログラム(BLP)」というリーダーシップ教育プログラムを行っており、私はその責任者を務めております。

BLP のなかでは、1年間で何百ものチーム活動が行われています。そのため、どんな組み合わせでどんな活動を行ったチームが高い成果を上げるのか、詳細かつ莫大なデータを収集、分析することができるというメリットがあります。現在は2年生向け授業をフィールドにしながら、共同研究者らとともに様々な形でチームに関する研究に取り組んでいます。

では、なぜいま、私が「チーム」に注目しているのか。一言でいうと、平成も終わり、昭和の名残ともいえる新卒一括採用、年功序列、終身雇用といった日本型雇用システムに基づいた「ザ・職場」に大きな変化の波が押し寄せていると感じるからです。働き方が多様化し、長期雇用は前提ではなくなりつつあり、また、ジョイントベンチャーなど組織の壁を超えた協業などもこれまで以上に行われるようになっています。つまりいま、私たちの働く環境は、知り合って間もない多様なメンバーと、それぞれの良さを生かしつつ、チームを動かしていかなければならなくなっているということです。さらに、ビジネススピードの加速により、以前にも増して短時間で高い成果を出すことが求められるようになっています。

こうした働く環境の変化のなかで、求められているのは「ザ・職場の動かし方」ではなく、新たなチームを形成する「チームアップ(Team up : チームづくり)」の技術です。これまでの日本企業では、新入社員が時間をかけてゆっくりと組織へ適応していく形で「組織社会化」が行われていたため、短期的にチーム形成を行う重要性はそれほど高くありませんでした。そのためか、マネジメント層やリーダー層に対してチームアップの技術を伝える研修などもあまり力を入れて行われてきませんでした。

そもそもチームアップにかかわる科学的な研究知見なども、あまり多くはありません。チームやチームアップに関する言説の多くは、実務家の経験から生み出された持論のようなものが様々な形で広まったものがほとんどです。こうした言説はビジネスパーソンの知恵の結集であり、おおいに参考になるところではありますが、科学的に検証された知見というわけではありません。

そこで私は、BLPをとおして「チーム」や「チームアップ」にかかわる方法論をもう少し科学的に検証していきたいと考えています。BLP で学生たちがチームづくりに苦戦する姿を見ていると、いろいろわかってくることもありますし、BLP のチームについてのこの1年の調査結果もまとめていく予定です。

「目標を握れ」とはいうものの……

具体的に調査で明らかにしていきたいことのひとつが、「チームアップに関する定説は真実なのか」ということです。

たとえば、チーム研究に関する原理原則のひとつとして挙げられる「目標の原理」。これは「チームは目標を握ることが重要」だということを指していますが、本当にそれだけでよいのでしょうか。目標を握っていたはずなのに、うまくいかないケースは多々あるはずです。BLP の学生たちも最初はみんなで目標を握りますが、その目標が漠然としていたために、目指すべき方向が食い違ってしまって空中分解するというのはよくあるパターンです。目標は具体的に表現することが大切なのだとわかります。

さらによくあるのは、最初は同じ目標をしっかりと握っていたにもかかわらず、徐々に噛み合わなくなっていくケースや、目標そのものがズレていくというケースです。目標は一度立てて終わりではなく、何度も確認して握り返したり、現状をモニタリングしながら調整・再設定していくことも必要です。

「目標を握る」というチームワークの原則ひとつをとっても、どうすれば成果につながるのかというのは、もっと深掘りして細かく見ていく必要があります。

外向的な人の多いチームがよい?

もうひとつ、チームについてよくいわれるのが、「コミュニケーションが重要」だという「インタラクション(相互作用)の原理」です。チームの目標がしっかり握れていて、それに向かってきちんとコミュニケーションがとれていればいいというのはそのとおりだと思います。しかし、本当に重要なのは、コミュニケーションの“質”ではないでしょうか。しっかりと対話ができているのか。異なる意見も尊重できているか。互いにフィードバックができているか。対話やフィードバックがなければ、コミュニケーションがとれていても生産的な方向へ機能しない場合もあります。

また、コミュニケーションが重要だからといって、外向的で「コミュ力」だけ高い人ばかりのチームがいいとも言えません。BLP では今後、2年生向けの授業で、性格特性とチームとの関係もデータを取って分析していく予定です。全員が外向性の高い人ならば良いチームになるかといえば、そうでもない。では外向性の高い人、内向性の高い人がどんな割合で組み合わさったチームが強いのか。

このように、単に「コミュニケーションが重要」といっても、実際は細かく見ていくべき部分が多々あるのです。そういったことも、研究で明らかにしていきたいと考えています。

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