J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2014年03月号

CASE.1 NTTコムウェア 研修は組織を変える 社内のニーズに応えるために内製化を実現

NTTコムウェアでの研修内製化は、自然な流れで起こった。社内のニーズを聞き、課題を把握し、研修の理想的なデリバリーを考えた結果、外部に頼るべきところはありつつも、人材開発部が直接運営するという形がベストだとわかったからだ。そして、今では着任したばかりの人でも研修をつくることができるように、そのノウハウを共有している。どうしたら、そんなことが可能なのか、その考え方と仕組みを紹介する。

三尾 和幸 氏 総務人事部 HCMセンタ キャリアアップ支援室 室長

NTTコムウェア
1997年9月創業。NTTのソフトウェア部門を事業化して設立。IPネットワーク技術やミドルウェア、オープンソースやクラウド、セキュリティ技術の分野など、幅広い実績と豊富なノウハウを持ったシステムインテグレータ。
資本金:200億円、売上高:1,877億8,500万円、従業員数:5,280名(2013年3月31日)

[取材・文]=西川 敦子 [写真]=編集部

●はじめに研修で組織を変える

NTTグループのシステムインテグレート企業、NTTコムウェア(本社:東京都港区)。約5,200名いる社員の研修を取り仕切る、総務人事部の三尾和幸氏は、アイデアマンだ。研修の開始時にグループ内で行う自己紹介。三尾氏は、これに1分間の最近あったちょっといい話をつけ加えて、「Nice&New」と名づけている。このほうが記憶に残るからだ。実際朝礼でやっている職場も多い。ちょっといい話が加わることで仕事以外の顔が見え、場が和むのだ。

研修中は全員が笑顔を心がけ、スマイルバッジ(写真)をつけたチームの代表「スマイルリーダー」が、みんなの笑顔をチェックする。こうした研修の雰囲気づくりのために、「できない」「ムリ」といったネガティブな表現にはみんなでイエローカードを提示。「こうすればできる」など、ポジティブ思考の発言はグリーンカードでほめ合う。これらは、同社で行われるほとんど全ての研修に組み込まれている。その狙いは、組織全体の共通言語をつくること。今では、スマイルバッジを誇らしげに社員証のストラップにつけて歩く社員も多い。それだけではない。4年目研修の成果発表は、300人が入るホールで行い、全社巻き込み型のイベントに発展させた。課長研修では、実務で使える「課長業務虎の巻」を受講者自身につくってもらい、業務の効率化に貢献(本誌2012年11月号特集「管理職が元気な会社」を参照)。大小さまざまな工夫で組織に影響を与えている。それが可能なのも、研修が「楽しい」と評判だからである。とにかく三尾氏は、楽しさを大事にする。理由は明確。そのほうが、みんながやる気になり、よく学ぶからだ。「研修は、組織を変える」と言う三尾氏の研修のつくり方を紹介する。

●背景内製化するしかない

同社が内製化に大きく舵を切ったのは、三尾氏が総務人事部に異動した、2008年4月以降。その時点で、すでに2008年度の研修計画は確定済みだった。唯一、三尾氏に企画を任されたのが入社4年目社員を対象とする「4年目研修(当時。現・ネクストリーダー研修)」である。当初、4年目前後に離職率が上がる傾向があり、それを防ぐことが研修の目的だった。ところが、前年度のアンケートに目を通すと、90%は当たり前に超えるべき満足度が71%と、やや低い。また、アンケートの中にクレームのような意見(場所が遠い、目的がわからないなど)も散見された。研修をオブザーブしていても、受講生が仕事を引きずって研修に参加しているように見え、議論が盛り上がるまで時間がかかることなどが気になった。

実際、前年度の受講者10名ほどにヒアリングに行くと、研修の記憶はおぼろげ。「同期に久しぶりに会えてよかった」といった感想はあるものの、学習した内容は残っていない。そこで、研修のコンセプト(=方針)から見直すべく調査を開始した。調査方法としては、他社状況を調べると同時に、NTTグループ数社の4年目社員にヒアリングやアンケートを実施。社内では、4年目の上司に当たる人たちにヒアリング。「仕事ではテクニカルに寄ってしまうのでヒューマンスキルをやってほしい」「ベンダーの研修は事業部でもできるので、全社ならではのものを期待する」「視野を広げてほしい」といったニーズを把握した。研修受講予定の4年目社員たちにも希望を聞き、「日々の業務で身につかないことをやりたい」「事業部のことしか知らないので、他の組織のことを知りたい」といった要望を吸い上げた。こうした丹念な調査から、コンセプトを「将来リーダーとして業務を担うための出発点としての基礎固めの場」と決定。コンセプトに合わせて研修の名前も「ネクストリーダー研修」と命名した。

問題は、それをどう実現していくかだ。コンセプトを形にしていくことも大事だが、アンケートに寄せられた不満を解消し、積極的に取り組んでもらうためには、「研修に来るのが楽しみ」という状況を前もってつくり出さなければならない。そのためには、ベンダー任せではなく、事前の上司・本人へのフォローから、会場選びまで、もっときめ細かい配慮が必要になる。そこで、ベンダー主導ではなく、運営を自分たちで行うことにした。具体的には、研修テキスト作成や会場設営、司会進行などほとんどを内製化に変更。しかし、全てを内製化するわけではない。参加者の手元に残る「参考書籍」と、社内講師ではおよばないプロの「講師」が必要なところは、外部を活用する。講師選定には、必ず面談と講義の聴講を経る。最適なものを丹念に探すのも重要な役割だからだ。

●研修のつくり方着任したばかりでも、できるように

育成担当者としての心構え

着任早々の育成担当者に、伝えていることがある。パワーポイント16枚ほどの手づくり資料にまとめているが、ここではそれに沿って、研修に対する「考え方」、作り手としての「姿勢」、研修の全体像を紹介していこう。最初に伝えるのは、どんな研修をつくればいいのか、ということ。大事なのは「楽しくて、手ごたえがあること」である。「好きなことは身につくのも早い。楽しいと吸収力が抜群に上がります。ですが、面白いだけではダメ。頭を使って体得していくことが学びの基本です。この2つが守られていれば、研修として成功です。そのうえで、記憶に残って、その人の支えとなるような研修をめざしてほしいです」続いて人材育成面でのミッションやビジョンを共有した後は、「作り手」としての姿勢について話す。

「研修をつくる際は、『三方一両得』で行こうと言っています。三方とは、受講生、自分、会社のこと。この三者がそれぞれ得をするという意味ですが、バランスをとるのが難しい。その解決策を考えることで、研修構築が『作業』にならず、創造的な仕事になります」例えば、こんなことがあった。「分厚くて重いテキストは持参不要にしよう」と提案する担当者がいたのだ。「これは自分の価値観から出た提案です。たしかに受講者も楽だし、事務局もクレームを回避できるかもしれない。しかし会社にとっては、どうか。分厚いテキストを当日、持参することで学びの効果が高まるのであれば、テキストは持参すべきなのです。お客様(受講者)志向を取り間違えると、最終ゴールの『受講生の学び』という品質※1が疎かになってしまいます」

事前フォロー

スケジュールのフォーマットや作業フロー(図1)も丁寧に作成され、誰が担当しても作業手順や狙いがわかる仕組みになっている。

特徴的なのは、事前と事後のフォローだ。研修の1カ月前には、受講者を決定し、グループをつくる。そして、各グループだけのメーリングリストをつくり、自己紹介を済ませてもらう。

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