SDGsへの取り組みは、人と組織が成長する機会です。社員一人ひとりの自分ごと化が進むことで、意識や行動が大きく変わった企業を取り上げます。
産業廃棄物の再資源化に取り組む石坂産業。現在では減量化・再資源化率98%を誇り、循環型社会の実現を牽引する。今でこそ事業は社会的に価値が認められているが、かつては誇りをもてず、悔しい思いをする時期もあった。なぜ会社は変わり、地域や社会を巻き込む様々な取り組みを行えるようになったのか。専務取締役の石坂知子氏に聞いた。
見渡す限り広がる青々とした新緑。木々の間からこぼれる陽光。気持ちのよい空気を全身に浴び、五感をフル活用させながら、散策路を歩く。日常から解き放たれた、贅沢なひと時を味わえるこの場所は、公園でもテーマパークでもない。企業の敷地なのである。
埼玉・三芳町を拠点とする石坂産業は、1967年に建設土木の廃棄物処理業に始まり、今年で創業55年を迎える。「ZERO WASTE DESIGN」すべての廃棄物が資源化する社会へ――。そんなビジョンを掲げ、ごみをごみにしない社会を目指し、産業廃棄物の再資源化に取り組む。本業そのものがSDGsと密接に関連する同社では、他にもSDGsにつながる様々な取り組みを行っている。その1つが、冒頭で紹介した里山、「三富(さんとめ)今昔村」の保全と公開だ。同社はなぜ、そのような取り組みを行っているのか、説明していこう。
「所沢のダイオキシン問題は、弊社の方針が転換する1つのきっかけになりました」
そう話すのは、同社専務取締役の石坂知子氏だ。1999年、所沢の野菜はダイオキシンに汚染されているという報道が行われ、周辺で一番高い煙突のある石坂産業に非難が集中した。ダイオキシンに汚染されているということ自体が誤報だったのだが、風評被害は収まることがなく、会社の前に周辺住民の「出ていけ」というのぼり旗が立ったこともあるという。
「多くの社員が会社を去り、廃業の瀬戸際になったこともありました。そんな状況では、社員は誇りをもって働くことはできません。そのときに思ったんです。私たちが何をしているのかわからない、つまり、事業内容を開示する機会が少ないから、住民の方は不安になり、誤解につながるのではないかと。私たちが行っている産業廃棄物の再資源化は、なくてはならない価値のある事業として自信をもって発信できることです。だから、見せ方を変えて情報をどんどん開示していこうという方針に会社が舵を切ったのです」(石坂氏、以下同)
その一環として、2008年にリニューアルが完了した新しい工場には、事業を‟見える化”するための見学通路を設営した。混合廃棄物の荷下ろし場からがれき類を選別・破砕する様子、コンクリートや混合・紙・プラスチック、木材などを分別分級し、再生していく様子、ごみの圧縮処理を行い減量化する様子など、ガラス越しにプラントを見学できるようになっている。
石坂産業株式会社
1967年に土砂処理業を行う石坂組として創立。以後、産業廃棄物収集運搬処理業、中間処理業などを行う。現在はごみをごみにしない社会づくりを目指し、産業廃棄物の再資源化や環境教育活動に力を入れた事業を展開する。
資本金:5,000万円
売上高:61億6,200万円(2020年8月期)
従業員:約180名(2021年1月)
写真は石坂知子(いしざか ともこ)氏
産業廃棄物の再資源化に取り組む石坂産業。現在では減量化・再資源化率98%を誇り、循環型社会の実現を牽引する。今でこそ事業は社会的に価値が認められているが、かつては誇りをもてず、悔しい思いをする時期もあった。なぜ会社は変わり、地域や社会を巻き込む様々な取り組みを行えるようになったのか。専務取締役の石坂知子氏に聞いた。
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