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Image by Sakosshu Taro / PIXTA(ピクスタ)

SDGs浸透で
変化する人と組織

SDGsへの取り組みは、人と組織が成長する機会です。社員一人ひとりの自分ごと化が進むことで、意識や行動が大きく変わった企業を取り上げます。

2022年07月04日

第5回:
‟地域に愛される会社“を目指した取り組みが 社員の挑戦を後押しする

産業廃棄物の再資源化に取り組む石坂産業。現在では減量化・再資源化率98%を誇り、循環型社会の実現を牽引する。今でこそ事業は社会的に価値が認められているが、かつては誇りをもてず、悔しい思いをする時期もあった。なぜ会社は変わり、地域や社会を巻き込む様々な取り組みを行えるようになったのか。専務取締役の石坂知子氏に聞いた。

ZERO WASTE DESIGNを掲げて

見渡す限り広がる青々とした新緑。木々の間からこぼれる陽光。気持ちのよい空気を全身に浴び、五感をフル活用させながら、散策路を歩く。日常から解き放たれた、贅沢なひと時を味わえるこの場所は、公園でもテーマパークでもない。企業の敷地なのである。



埼玉・三芳町を拠点とする石坂産業は、1967年に建設土木の廃棄物処理業に始まり、今年で創業55年を迎える。「ZERO WASTE DESIGN」すべての廃棄物が資源化する社会へ――。そんなビジョンを掲げ、ごみをごみにしない社会を目指し、産業廃棄物の再資源化に取り組む。本業そのものがSDGsと密接に関連する同社では、他にもSDGsにつながる様々な取り組みを行っている。その1つが、冒頭で紹介した里山、「三富(さんとめ)今昔村」の保全と公開だ。同社はなぜ、そのような取り組みを行っているのか、説明していこう。

事業の‟見える化“で誤解を払拭

「所沢のダイオキシン問題は、弊社の方針が転換する1つのきっかけになりました」

そう話すのは、同社専務取締役の石坂知子氏だ。1999年、所沢の野菜はダイオキシンに汚染されているという報道が行われ、周辺で一番高い煙突のある石坂産業に非難が集中した。ダイオキシンに汚染されているということ自体が誤報だったのだが、風評被害は収まることがなく、会社の前に周辺住民の「出ていけ」というのぼり旗が立ったこともあるという。

「多くの社員が会社を去り、廃業の瀬戸際になったこともありました。そんな状況では、社員は誇りをもって働くことはできません。そのときに思ったんです。私たちが何をしているのかわからない、つまり、事業内容を開示する機会が少ないから、住民の方は不安になり、誤解につながるのではないかと。私たちが行っている産業廃棄物の再資源化は、なくてはならない価値のある事業として自信をもって発信できることです。だから、見せ方を変えて情報をどんどん開示していこうという方針に会社が舵を切ったのです」(石坂氏、以下同)

その一環として、2008年にリニューアルが完了した新しい工場には、事業を‟見える化”するための見学通路を設営した。混合廃棄物の荷下ろし場からがれき類を選別・破砕する様子、コンクリートや混合・紙・プラスチック、木材などを分別分級し、再生していく様子、ごみの圧縮処理を行い減量化する様子など、ガラス越しにプラントを見学できるようになっている。

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プロフィール

石坂産業株式会社

石坂産業株式会社
1967年に土砂処理業を行う石坂組として創立。以後、産業廃棄物収集運搬処理業、中間処理業などを行う。現在はごみをごみにしない社会づくりを目指し、産業廃棄物の再資源化や環境教育活動に力を入れた事業を展開する。
資本金:5,000万円
売上高:61億6,200万円(2020年8月期)
従業員:約180名(2021年1月)

写真は石坂知子(いしざか ともこ)氏

ARCHIVE
過去の連載記事

2022年07月04日

第5回:‟地域に愛される会社“を目指した取り組みが 社員の挑戦を後押しする

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2022年02月10日

第4回:ダイバーシティの本質とは、多様な視点を集め、組織にイノベーションを起こすこと

ビジネス環境変化への柔軟な対応やイノベーション創出が求められる現代において、多様な人材の価値や発想を活かそうという「ダイバーシティ」の重要性はますます高まっている。しかし、ダイバーシティへの意識が十分に浸透しているとは言いがたいのが現状だ。 ダイバーシティの本質とは何か。SDGsとどのようにつながっているのか。ダイバーシティの第一人者であるイー・ウーマン代表の佐々木かをり氏に聞いた。

2022年01月24日

第3回:多様な人材が活躍する風土醸成を目指し「男性育児休業」を推進

創業時より、食品会社として事業を通じた社会貢献を目指してきた江崎グリコ。2019年より取り組む「Co育てPROJECT」(読み:こそだてぷろじぇくと)は、子育てに関する社会課題を解決するプロジェクトである一方で、多様な人材が活躍できる風土の醸成も目的の1つだ。これはSDGsの目標8「働きがいも経済成長も」に深く関わる。関連する社内制度の設計と運用を担うグループ労政部の齋藤尚美氏に話を聞いた。

2021年12月16日

第2回:世界でもっともエコな食料生産を目指すエコロギーのSDGs

近年、食料問題解決の一つとして、昆虫食が世界で注目を集めている。今回紹介するエコロギーは、食用コオロギの生産に取り組む企業だ。同社の特徴は、生産に留まらず、発展途上国であるカンボジアのフードロス削減、健康課題の改善、雇用創出といった様々な社会課題解決に寄与している点にある。その取り組みの詳細と、社会課題に挑むリーダーとしてのビジョンやリーダーシップについて、同社代表の葦苅晟矢氏に聞いた。

2021年11月15日

第1回:人と組織の成長にも寄与するオリオンビールのSDGs

「人を、場を、世界を、笑顔に。オリオングループ」をミッションに、1957年の創業以来、地元の沖縄はもとより、全国にも根強いファンを持つオリオンビール。SDGsへの取り組みに併せて、企業理念『ORION WAY(オリオンウェイ)』の策定をはじめ、人事制度全体も見直したという。その意図は何か。オリオンビールの人事総務本部に詳しく話を聞いた。