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Image by Sakosshu Taro / PIXTA(ピクスタ)

SDGs浸透で
変化する人と組織

SDGsへの取り組みは、人と組織が成長する機会です。社員一人ひとりの自分ごと化が進むことで、意識や行動が大きく変わった企業を取り上げます。

2022年01月24日

第3回:
多様な人材が活躍する風土醸成を目指し「男性育児休業」を推進

創業時より、食品会社として事業を通じた社会貢献を目指してきた江崎グリコ。2019年より取り組む「Co育てPROJECT」(読み:こそだてぷろじぇくと)は、子育てに関する社会課題を解決するプロジェクトである一方で、多様な人材が活躍できる風土の醸成も目的の1つだ。これはSDGsの目標8「働きがいも経済成長も」に深く関わる。関連する社内制度の設計と運用を担うグループ労政部の齋藤尚美氏に話を聞いた。

理念に立ち返ることで生まれた「Co育てPROJECT」

2019年2月6日、江崎グリコ(以下、グリコ)の代表取締役社長の江崎勝久氏は、家族間でのコミュニケーションや育児の協同を推進するCoparenting(コペアレンティング)社会の実現に向けて、「商品」「情報サービス」「産学官連携」「社内制度」の4本の柱からなる「Co育てPROJECT」のスタートを記者会見で宣言した。

「折しも2019年はグリコ創業者である江崎利一氏がグリコーゲンに出会ってから100年目となる節目の年。創業時からの「子どものココロとカラダの健やかな成長」という理念に立ち返り、“ワンオペ育児”に代表される現代の親たちが抱える諸問題を解決すべく、「Co育て」をスタンダードにするという目的に向かって「Co育てPROJECT」が立ち上がった。

ちなみに、グリコは子育てを「Co育て」としているが、これは、「Communication(和気あいあいと)」「Co-operation(上手に協力しながら)」「Co-parenting(いっしょに子どもを育てる)」の3つの英語の「Co」に由来する(図1)。



図1:「Co育てPROJECT」の概要 「Co育てPROJECT」の概要

「社内制度」の改革が4本目の柱

4本の柱のうち、まず、1本目の「商品」では、母乳に近い栄養成分を含有し、子育ての負担軽減が期待される乳児用液体ミルク『アイクレオ 赤ちゃんミルク』を筆頭に、子育て環境改善や子どもの成長に資する商品の開発・発売に取り組む。

2本目の「情報サービス」では、妊娠から2歳になるまでの1000日間、家族だけでなく子どもに関わる誰もが一緒に楽しみながら育児を協力し合うことを目的とした子育てアプリ「こぺ」を無償提供している。さらにオンライン上での子育て支援活動(「パパ向け調乳セミナー」など)はコロナ禍において男性の育児参加にも大きく貢献し、産院・自治体・企業等で実施されるなど、好評を博した。

3本目の「産官学連携」においては、東京学芸大学とともに子育てに重要な「感じる」「考える」「コミュニケーション」を学べるペアワーク「Co 育てプログラム」を開発。希望する自治体や企業、子育て支援団体に無償提供を行っている。

そして、4本目の柱として同社は自社の「社内制度」の改革にも着手する。2019年3月から従来の妊娠・育児有給休暇を、より「Co 育てPROJECT」の文脈へ沿う制度として「Co育て休暇」へと改訂した。一連の制度設計と運用を担うグループ労政部の齋藤尚美氏は次のように説明する。

「社会全体での育児参画推進を発信するのであれば、まずは当社の社員も実現できる風土が必要ということで、最初に妊娠・育児有給休暇から見直しを行いました。

改定した『Co育て休暇』では、①取得期間を従来の1歳8カ月から満2歳までに延長、②不妊治療等を目的とする妊活社員への対象の拡大、③3歳以上の子どもや孫を持つ社員へと、対象と目的の拡大をしました(図2)。

特に『子・孫がいる従業員』を対象とした休暇については、一般職はもとより、経営職層や部門長まで制度を幅広く利用されています。『孫の運動会に行ってきた』『これまでなかなか休暇が取れなかったが、久々に、少し大きくなった子どもの学校行事に参加できた』など、社内の反応も上々です」

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プロフィール

江崎グリコ株式会社

江崎グリコ株式会社

江崎グリコは、菓子、アイスクリーム、ヨーグルト・乳飲料、洋生菓子などを製造・販売する食品メーカー。1922年創業し、2022年に100周年を迎える。「おいしさと健康」の企業理念のもと、現在、世界12カ国で事業を展開。

資本金:77億7,300万円
連結売上高:3,440億4,800万円(2020年12月末現在)
連結従業員:5,360人(2020年12月末現在)

写真左は齋藤尚美氏(江崎グリコグループ労政部)

ARCHIVE
過去の連載記事

2022年07月04日

第5回:‟地域に愛される会社“を目指した取り組みが 社員の挑戦を後押しする

産業廃棄物の再資源化に取り組む石坂産業。現在では減量化・再資源化率98%を誇り、循環型社会の実現を牽引する。今でこそ事業は社会的に価値が認められているが、かつては誇りをもてず、悔しい思いをする時期もあった。なぜ会社は変わり、地域や社会を巻き込む様々な取り組みを行えるようになったのか。専務取締役の石坂知子氏に聞いた。

2022年02月10日

第4回:ダイバーシティの本質とは、多様な視点を集め、組織にイノベーションを起こすこと

ビジネス環境変化への柔軟な対応やイノベーション創出が求められる現代において、多様な人材の価値や発想を活かそうという「ダイバーシティ」の重要性はますます高まっている。しかし、ダイバーシティへの意識が十分に浸透しているとは言いがたいのが現状だ。 ダイバーシティの本質とは何か。SDGsとどのようにつながっているのか。ダイバーシティの第一人者であるイー・ウーマン代表の佐々木かをり氏に聞いた。

2022年01月24日

第3回:多様な人材が活躍する風土醸成を目指し「男性育児休業」を推進

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2021年12月16日

第2回:世界でもっともエコな食料生産を目指すエコロギーのSDGs

近年、食料問題解決の一つとして、昆虫食が世界で注目を集めている。今回紹介するエコロギーは、食用コオロギの生産に取り組む企業だ。同社の特徴は、生産に留まらず、発展途上国であるカンボジアのフードロス削減、健康課題の改善、雇用創出といった様々な社会課題解決に寄与している点にある。その取り組みの詳細と、社会課題に挑むリーダーとしてのビジョンやリーダーシップについて、同社代表の葦苅晟矢氏に聞いた。

2021年11月15日

第1回:人と組織の成長にも寄与するオリオンビールのSDGs

「人を、場を、世界を、笑顔に。オリオングループ」をミッションに、1957年の創業以来、地元の沖縄はもとより、全国にも根強いファンを持つオリオンビール。SDGsへの取り組みに併せて、企業理念『ORION WAY(オリオンウェイ)』の策定をはじめ、人事制度全体も見直したという。その意図は何か。オリオンビールの人事総務本部に詳しく話を聞いた。