菊池健司氏
- 読書の鬼・菊池健司氏イチオシ 今週の"読まぬは損"
- 1日1冊の読書を30年以上続けているというマーケティング・データ・バンク(MDB)の菊池健司氏。 「これからの人事・人材開発担当者はビジネスのトレンドを把握しておくべき」と考える菊池氏が、読者の皆様にお勧めしたい書籍を紹介します。
いつの時代も「本」は学びの宝庫
週に一度の書店巡りは個人的にもとても大切な時間である。
様々な本との出会いは新たな知見を自分に授けてくれる。
著者買いやタイトル決め打ちの場合は、ネット書店の恩恵に預かる、あるいは電子書籍で購入することも多いのだが、近年、リアル書店に出向くことの重要性をさらに実感している。
店頭の陳列からは、新刊の数々を通して、世の中の注目の分野や人々が不安を抱えている分野がよくわかる。
やはり、現場を見て、はじめてわかることも多いのだ。
版を重ねた王道書籍はもちろん、タイトルだけでは判断しにくい素晴らしい書籍を見つけられるのも、リアル書店ならではだと思う。
自分が不得手とする分野(自分に全くセンスがないと感じる分野)にもあえて立ち向かうことにしている。
AI時代は、自分が弱点だと認識している分野を少しずつなくしていくことが重要な気がしてならない(これは、いずれ詳しく触れたいテーマである)。
コロナ禍においてはほぼ消滅していた出張機会も、最近は随分と増えてきた。
旅は好きなのでありがたいことなのだが、仕事で伺った街に降り立つと、まず真っ先に何をするかと言えば、その地域の有力書店に行くようにしている。
そして研修や講演会では、最初の話題において、書店ネタを話すことも多い。
仕事柄、様々な企業や団体の経営者の方とお目にかかるのだが、本の話題で盛り上がることは数多い。
おすすめ本もありがたいことによく聞かれるので、「王道本」と「変化球本」の両方を揃えて、顧客と向き合うようにしている。
「本」が人生を変えてくれたと認識しているイチビジネスパーソンとしても、読書で切り拓く世界感というのは、いつの時代もうれしい話題である。
さて、今回ご紹介する1冊は、本連載読者にはぜひ、必読書に認定いただきたい素晴らしい1冊である。
経営層、次世代リーダー層、もちろん人材部門の皆様にも強くお勧めしたい。
その名も『「会社は「本」で強くなる マネーフォワード 全社で取り組む「読書経営」』。
マネーフォワード代表取締役社長グループCEOである辻庸介氏が全社で取り組んでいる「読書経営」について、フリーランスのインタビュアーである宮本恵理子氏が6年以上かけて辻氏や経営陣、社員の皆さんに行った渾身の取材をベースに構成されている。
マネーフォワードを利用している方は多いのではと拝察するのだが、同社の成長を支えたのは、全社に浸透する「読書経営」であった。
本書の構成
本書は、全6章で展開される。
第1章:急成長するマネーフォワード 飛躍の秘訣に「本」があった
本章では、世界的にも競争の激しいいわゆる「フィンテック」領域において、創業13年で売上高400億円、社員数2900人の規模に成長した同社の「読書経営」の起点となる話題が提供されている。
「読書セッション」の進め方など、「読書を空気にする」リーダーたちの取り組みに学ぶ点は数多い。
第2章:「僕は本によって“経営者”になれた」――辻庸介グループCEOの読書
本章はタイトル通り、辻CEOの幼少期から経営者になるまでの道をたどりながら、読書からの学びを感じ取ることができる。読書による成長を4つのフェーズに分け、具体的な書名も挙げながら解説されている。詳しくは本書でぜひ確認いただきたいのだが、いずれも次世代経営者を目指す方であれば、必読書ばかりである。
意思決定の思考を研ぐのは「古典」と「未来予測」というフレーズは大変重要だと思う。
第3章:学び続けるリーダーたち 必ず読む定番の2冊
同社では、リーダー育成施策として、独自の「LFP(Leadership Forward Program)」を展開している(2021年開始)。
本章で登場する2冊は、私も読んでいて「なるほど」と思う本であった。
うち1冊は、個人的にも尊敬してやまないコンサルタントの方も必ず役員研修で配布している本であった。
いずれも本書で内容を確認し、すぐにお読みになることをお勧めしたい名著である。
第4章:チームを強くする「読書セッション」 各部門トップは「本」を通じて何を伝えたか
「読書セッション」は2024年度から開始した人材育成施策である。
毎回テーマを変えて、それに即した1冊の課題図書を事前に読み、辻氏をはじめとした経営陣(講師役)と参加者が対話を行う年間5回の連続研修となっている。
ありがたいことに、各回の講師名と実際に使用された本の名称も紹介されている。さらには講師インタビューまで…(推薦図書付き!)。
バリュー満載の章である。ぜひ参考にしていただきたい。
第5章:時間がなくても本から学べる 経営陣の読書術
本章では、辻氏をはじめとした多忙な経営陣の読書術が学べることはもちろん、ビジネスパーソンにとっての読書の“役割”を再認識できることがありがたい。
グループCDO(Chief Design Officer)である伊藤氏の読書法(電子書籍を大画面モニターに移し、複数ページを“絵”として掴む)というのは実にユニークな読み方である。
自分も早速やってみようと思う。
第6章:現場が育む読書文化 「すごい読書会」がもたらすもの
読書が同社に与えた影響はあまりにも大きい。トップが主催するだけではなく、社員が自発的に部署を超えた読書会を開催して、会社に良い影響を与えている。
その模様を臨場感たっぷりで読めるのが本章である。
「読書経営」の考え方は素晴らしい。それを改めて教えてくれる必読の1冊
本書は、以下のような項目を意識しながら読み進めた。
- 急成長を続けるマネーフォワードの強さの秘訣を「読書経営」の観点で学ぶ
- 本書で登場する本で自分の未読書をピックアップし、早速読み進める(読み逃しはあまりにも勿体ない)
- 人材育成の観点で「読書」をどう位置付けるか、改めて顧客目線で考え抜く
- 自分の読書法に新たな技を加える
本書に終わりには、ブックリストも掲載されており、この部分だけでも珠玉のタイトル集が手に入る。
久々に、「星野リゾートの教科書 サービスと利益 両立の法則」(中沢康彦著/日経BP)や「教科書経営 本が会社を強くする」 (中沢康彦著/日経BP)といった書籍も手に取ってみたくなった。
本書を読んでいて、「読書」の素晴らしさ、そして「読書経営」の大きな可能性を改めて痛感したことは言うまでもない。多くの読者に参考にしていただきたいと願う。
エピローグで登場する、執行役員瀧俊雄氏によるコメントのタイトルには「自分とは合わない本にこそ成長のヒントがある」と書かれている。
こちらもどうかお見逃しなく。

