今週の“読まぬは損”

第210回『日本人が知らない!!世界シェアNo.1のすごい日本企業』

菊池健司氏 日本能率協会総合研究所 MDB事業本部 エグゼクティブフェロー

菊池健司氏

読書の鬼・菊池健司氏イチオシ 今週の"読まぬは損"
1日1冊の読書を30年以上続けているというマーケティング・データ・バンク(MDB)の菊池健司氏。 「これからの人事・人材開発担当者はビジネスのトレンドを把握しておくべき」と考える菊池氏が、読者の皆様にお勧めしたい書籍を紹介します。

日本には世界に誇るモノづくり企業が多数存在している

経済産業省は数年に1回のペースで、「グローバルニッチトップ企業100選」 というデータを公表している。

本データの紹介文は以下のように書かれている。
【日本には、マーケティングや技術開発を通じた差別化戦略により、個々の市場規模は⼩さいものの、世界シェアが極めて⾼い製品が多数あり、それを製造する企業は世界のサプライチェーンにおいて「なくてはならない」存在。これらの企業群の経営努⼒を称え、広く世に⽰すべく、「グローバルニッチトップ企業100選」として表彰】

対象企業の規模感、選定要件については、以下のように分類がなされている。
<大企業>
世界市場の規模が100〜1000億円程度であって、概ね20%以上の世界シェアを保有
<中堅企業>
⼤企業のうち売上⾼が1000億円以下。概ね10%以上の世界シェアを保有
<中小企業>
概ね10%以上の世界シェアを保有

少し前のデータとなってしまうが、2020年に発表された結果が、本稿執筆時点での最新情報となる。よろしければ、一度社名を眺めてみていただきたい。

○2020年版「グローバルニッチトップ企業100選」 選定企業⼀覧

良く知っているという企業もあれば、正直初めて聞いたという企業もあると思う。

日本は今、高市政権のもと、新たな成長戦略を描いているが、「グローバルニッチ企業」の存在には、日本の未来の勝ち筋を考えるための重要なヒントが隠れている気がしてならない。ニッチ分野で世界に名を知らしめている企業からの学びは大きい。

そこで今回、皆様にご紹介したい書籍が、『日本人が知らない!!世界シェアNo.1のすごい日本企業』である。

経済ジャーナリストであり、東洋経済新報社編集局編集委員、そして昭和女子大学グローバルビジネス学部特命教授としてもご活躍されている田宮寛之氏の注目の新刊である。
ベストセラー作家としても知られている。

田宮氏の著書は常に「著者買い」させていただいているのだが、今回の1冊もまさに日本のこれからを考えるうえで必読の1冊である。

田宮氏がピックアップした「凄い50社」をぜひご堪能いただきたい。

本書の構成

本書は、業界を1つの章として、全6章で展開される。
最初に業界解説があり、その後で注目企業紹介、という構成になっている。

PART1:医療業界

本章では、白内障手術で使われる眼科ナイフの世界シェア30%を誇るマニー(栃木)をはじめ、3社のグローバルニッチ企業が登場する。
マニー社で年に2回開かれている「世界一か否か会議」の紹介など、注目エピソードが展開されている。

PART2:自動車・バイク・航空機業界

完成車・完成機の市場は世界トップの規模感だが、特定の部材等において、日本ならではのグローバルニッチ企業が5社存在する。
例えば、太平洋工業(岐阜)のタイヤバルブは国内シェア100%、世界シェア50%を誇る。本書では、同社の未来の姿に関する著者コメントも太字で書かれている。
高級ヘルメット市場で世界シェア60%を誇るSHOEI(東京)など、ピックアップされている企業が実にユニークだと感じるのではないだろうか。

PART3:インフラ業界

騒音も振動もない杭打機(世界初の技術)で世界シェア9割を誇る技研製作所(高知)をはじめ、5社が紹介されている。
海水淡水化ポンプを100カ国以上に納入している酉島製作所(大阪)は、海洋関連ビジネスを成長産業に押し上げたい日本の現状を考えても、今後さらに注目されていく予感がする。

PART4:機械・装置・工具業界

日本のお家芸といっても良い分野の1つであろう。
LNG船用安全弁で世界シェア90%以上を誇る福井製作所(大阪)、「カニカマ」製造機で世界一を誇るヤナギヤ(山口)など9社が紹介されている。

PART5:素材業界

アセチレンブラック、球状アルミナといった工業用製品分野で多くの世界トップ製品を有するデンカ(東京)をはじめ、3社が紹介されている。

PART6:半導体業界

日本の未来に今後、大きすぎる影響を与えていくのが「半導体業界」である。
まさに「産業のコメ」である。
北海道で本格生産を開始する国策半導体企業であるラピダスの動向には注目している方も多いだろう。
半導体ビジネスには、工程ごとに有力企業が多数存在する。
本書でも、半導体用ガラス基板で世界シェア首位のHOYA(東京)や、シリコンウエハーや塩ビの世界トップである信越化学工業(東京)など実に22社が紹介されている。
そして、この章には日本の食品トップ企業である味の素(東京)も登場する。
なぜ?半導体なのに?と思った方はぜひ本書にてご確認をお願いしたい。

本章では、マテハンのダイフク(大阪)、そして排ガス処理のカンケンテクノ(京都)も登場する。

日本の未来に思いを馳せるうえで、私たちに大きな勇気を与えてくれる

本書は、以下のような項目を意識しながら読み進めた。

  1. 日本を代表する「企業の目利き」として知られる田宮氏が注目している産業分野を知る
  2. 田宮氏があえて選定した50社について、関連情報も収集しながら注目ポイントを学ぶ
  3. 日本の成長戦略と照らし合わせて読む
  4. 日本の将来の勝ち筋について、本書を参考に考え抜く

未来にワクワク感を与えてくれる日本の素晴らしい技術を、私たちはもっと誇りに思っていい――。本書を読み、そんな思いを感じている。
本書に掲載されているような企業を、各社が熱い思いを持って創り上げていけば、この国の未来はきっと明るいものにできる。

もちろん投資家の方、就活に臨む皆様にとっても有益すぎるのだが、企業の経営戦略や事業戦略を担う方にも、業種業界関係なくご覧いただきたいバリューが高い1冊だと思う。

人事部門の皆様は、本書に登場する50社の人財戦略を調べておくと良いのではないだろうか。きっと大きなヒントが得られるだろう。

本書も全ビジネスパーソンにお勧めしたい素晴らしい1冊である。

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