今週の“読まぬは損”

第182回『時短の一流、二流、三流』

菊池健司氏 日本能率協会総合研究所 MDB事業本部 エグゼクティブフェロー

菊池健司氏

読書の鬼・菊池健司氏イチオシ 今週の"読まぬは損"
1日1冊の読書を30年以上続けているというマーケティング・データ・バンク(MDB)の菊池健司氏。 「これからの人事・人材開発担当者はビジネスのトレンドを把握しておくべき」と考える菊池氏が、読者の皆様にお勧めしたい書籍を紹介します。

成果を出すための時短の考え方とは……

かつて「24時間働けますか?」という栄養ドリンクのCMソングが流行ったことがある。若い読者の方は、ご存じであろうか。私も若い頃、このCMに出てくるように、「もしも24時間フルで働けたら」どんな成果が残せるのかを考えたことがある。

もちろん、そのような働き方をしたかったわけではないのだが、ある程度自分の仕事に自信が持てるようになり、それが成果として現れてくると、「さらに頑張りたい」という欲も沸いてくる。

時には、時間を目いっぱい使って頑張らなくてはいけないときもある、と当時は信じていた。いわば、「自分の時間」を仕事に投資する感覚である。今の時代感からは想像もできないことだが、当時は大残業したり、休日出勤することがカッコいいと思っている自分がいた。

以前より読書が好きで、それが高じてこのような名誉な連載を持たせていただいているのだが、様々なビジネス書を読んでいると、永遠の課題というものが浮かび上がってくる。その1つがやはり「ビジネスパーソンの時間の使い方」だと思う。2024年になっても、多くの時間術関連書籍が発刊されていることがその証である。

デンマーク人はなぜ4時に帰っても成果を出せるのか』(針貝有佳著/PHP研究所)が大きな注目を集めているのも、まさに今の時代感であろう。

『7つの習慣』(スティーブン・R・コヴィー著)や『限りある時間の使い方 人生は「4000週間」あなたはどう使うか?』オリバー・バークマン著)といった是非お読みいただきたい名著はもちろんのこと、今回、時間術における超オススメ本をご紹介したい。

その注目の新刊のタイトルは『時短の一流、二流、三流』。著者は越川慎司氏。越川氏の著書は時間術に限らず、「著者買い」をさせていただいている。私の推し著者のお一人である。

17万人! ものビジネスパーソンの分析結果が見事にメソッド化されており、いきなり全ては難しいかもしれないが、段々と取り入れていけるノウハウが目白押しの1冊である。

本書の構成

本書は、全8章で構成されている。各章において、本のタイトル通り、一流、二流、三流の対応の違いが紹介されている。なかには、意外と感じる一流の振る舞いも出てくる。そして、その「意外」がとても重要だったりする。

私も本にメモをいれながら、自分はこのパートは二流かな、三流かな、また辛うじて一流にいれてもらえそうかな等々、楽しみながら読み進めた。

Chapter1:仕事の進め方

この章では、8つのメソッドが紹介されている。週の初めや終わりにおける考え方や会議に対する考え方などが紹介されている。最初の章から、「自分の常識」を覆される方も多いのではないか。

Chapter2:書く・伝える時短

この章では、6つのメソッドが紹介されている。提案書1枚につき、一流が各文字数……皆様は何文字と予想されるであろうか。

Chapter3:管理・計画時短

この章では、4つのメソッドが紹介されている。一流の時間管理の秘密は……。私は本章を読み、急いであるタイプの置き時計を購入した。(詳しくは本書にて)

Chapter4:インプット時短 

この章では、4つのメソッドが紹介されている。私の専門分野でもある「情報収集」に始まり、読書に至るまで興味深い論考が展開される。ちなみに読書においては、一流は月に○冊を飛ばし読みするとのこと……なるほど。特にビジネス書を読むときには「適用力」が必要とのこと、全く同意である。

Chapter5:関係構築時短

この章では、7つのメソッドが紹介されている。マネジメント層をはじめ、ビジネスパーソンが是非意識しておきたい内容がズラッと並んでいる。「多様な相づち」と「内面とプロセスを褒める技術」いずれも是非磨いておきたい。

Chapter6:巻き込み時短 

この章では、5つのメソッドが紹介されている。特に「質問」に関するメソッドに私は注目したのだが、質問ではなく「発問」を使う。なるほど、私自身、毎週出演しているラジオ番組でゲストに質問するシーンがあるのだが、「発問」の重要性はとてもよくわかる。実践しなくては……。

Chapter7:ツール時短

この章では、7つのメソッドが紹介されている。一流のショートカット活用術などこちらも興味深い内容となっている。

Chapter8:時短思考

最終章では、4つのメソッドが紹介されている。時短を意識した思考に関する根本について学ぶことができる。私もついつい感じてしまう「不安」をエネルギーに変えて頑張っていきたい。

一流の時短術に学び、自分のスタイルを創り上げていく、そのためにも重要な1冊

本書は、以下のような項目を意識しながら読み進めた。

  1. まずは各メソッドのまとめページに目を通したあと、本文を読み進め理解を深める
  2. それぞれのメソッドにおいて、自分が「三流」なのか「二流」なのか、部分的にも「一流」はあるのかを自己評価してみる
  3. できていないと感じること(いくつもあった)の改善を講じるべく、すぐに試してみる
  4. 思考の変化等、成果実感に時間がかかる部分においても、まずはトライすることを強く意識する

数多くのメソッドが紹介されているが、1つあたり、2~3ページ、内容も「なるほど」ポイントが満載ということもあり、お読みいただくのに多くの時間はかからないと思う。もちろん、気になる章をピックアップして、そこから始めるのもいい。

かつては働き過ぎが高じて体調を崩したこともある著者が、「残業沼」から抜け出すために成果を出し続けるビジネスパーソンを徹底研究し、自らの会社も週休3日制を実現したそのメソッドが惜しげもなく公開されている。「時短」は目的ではなく、手段である。

「本書の時短術を少しずつ試していけば大丈夫です」越川氏も書いておられる通り、部分的に取り入れてみる、まずはトライしてみることがいずれ大きな成果につながるのだと私も思う。

多くのビジネスパーソンの悩みを解決してくれる貴重な1冊として、是非お読みいただきたい。

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