今週の“読まぬは損”

第180回『外資系データサイエンティストの知的生産術 どこへ行っても通用する人になる超基本50』

菊池健司氏 日本能率協会総合研究所 MDB事業本部 エグゼクティブフェロー

菊池健司氏

読書の鬼・菊池健司氏イチオシ 今週の"読まぬは損"
1日1冊の読書を30年以上続けているというマーケティング・データ・バンク(MDB)の菊池健司氏。 「これからの人事・人材開発担当者はビジネスのトレンドを把握しておくべき」と考える菊池氏が、読者の皆様にお勧めしたい書籍を紹介します。

データサイエンティスト不可欠な時代感……

データサイエンティストは、「DXの推進において、データを活用した業務変革や新規ビジネスの実現に向けて、データを収集・解析する仕組みの設計・実装・運用を担う人材」と定義されている(独立行政法人情報処理推進機構)。

世界そして日本のビジネスシーンにおいて、データサイエンティスト人材の採用合戦が繰り広げられている。

Harvard Business Review誌にて、データサイエンティストが「21世紀で最もセクシーな職業である」という論考が展開されてはや10年以上……。
2022年のHBR誌においても、データサイエンティストに関する言及があるので、是非ご覧いただきたい。

URL: https://dhbr.diamond.jp/articles/-/8782

日本でも、大手企業の採用サイトにおいては、「データサイエンティスト」「AI関連人材」募集の文字が並ぶ。データを分析できる人材、いやデータを科学できる人材への期待感は過去最高クラスで高まっているといえるだろう。その流れに生成AIが拍車をかけている。

一般社団法人データサイエンティスト協会が実施した一般ビジネスパーソン向けのアンケート調査によれば、「データサイエンティストという職種に就くことへの興味」という項目において、興味があると答えた方は32.4%という結果が出ている(特に20代の数値が高く40%を超えている)。
この調査は日米比較も掲載されているので、こちらも、お目通しをいただきたい。

さてこのような話題を展開したところで、今回ご紹介したい書籍が、「外資系データサイエンティストの知的生産術」。タイトルでそそられる方も多いのでは。

データを科学することが重要な時代において、ビジネスパーソンの今後是非備えておきたい「エンジン」の種類を教えてくれる今こそ読んでおきたい1冊である。「データサイエンティスト」何だか難しそうだ……、と構えることなく読み進めていただけると思う。

著者は京都大学客員教授である山本康正氏と現D Capital取締役である松谷恵氏。山本氏の著書は本連載でも幾度かご紹介している。

本書の構成

本書は全5章で構成されている。

タイトル通り、全50のスキルが登場するのだが、重要度が5つ星で評価されている。
随所に登場する著者によるコラムコメントが理解を助けてくれる。

第1章:データサイエンス思考―― この基本が付加価値を高める強力な武器になる!

本章では11のスキルが紹介されている。5番目に登場する「IPDACサイクル(Issue→Plan→Data→Analysis→Conclusion)」は強く意識してきたい。

10番目「現場の肌感覚をバカにしない」も重要である。実はこれからの時代、「現場情報」を収集・分析できる力がより重視されると私も思う。

第2章:インプット―― 仕事ができる人は情報収集を仕組み化する!

本章では10のスキルが紹介されている。情報収集・活用を専業としている1ビジネスパーソンとしても、興味深く読ませていただいた。本連載読者の方も私自身もそうだが、16番目の「読書とリサーチで2本の軸をつくる」は膝を打つところであろう。

19番目の「違和感を見逃さない」は私も特に重視しているスキルの1つである。

第3章:アウトプット―― インプットした情報を価値に変える基本ワザ!

本章では11のスキルが紹介されている。アウトプットのために分析は存在するので、もちろん、重要なスキルが満載なのだが、中でも26番目に登場する「「~となるはずだ」の思い込みは危険」は注目だと思う。

「自分の業界」バイアスは時に危険な判断の誤りにつながることを経験上、私も身に染みている。

第4章:コミュニケーション──IPDACの好循環を生み出す必須スキル!

本章では、データサイエンスを組織で活用するために最も必要な資質として、6のスキルが紹介されている。34番目に登場する「相手の土俵に乗って話を聞く」の項は、どの仕事においても重要だと思う。松谷氏による航空機自動制御技術実用化関連のエピソードも「確かに、なるほど」と感じていただけるのではないか。

第5章:マインドセット―― 働き方も、生き方も、自分で決める人になる指針!

最終章では、12のスキルが登場する。この12のスキルは、次世代リーダー研修でそのまま使っていただけるのでは……という内容がずらりと並ぶ。人事部門の方には特に注視して読んでおいていただきたい。

48番目「どんな小さな仕事でもリーダーシップをとる」の項で登場する「優れたリーダーシップに共通する特性の1つ」は要チェックである(詳しくは本書にて)。

難しく考えずに世界の「データサイエンティスト」が大切にしているビジネスの基本スキルが学べる1冊

本書は、以下のような項目を意識しながら読み進めた。

  1. 世界の先端を知る2人の著者が重視している50のビジネススキルを一通り学ぶ
  2. エピソードも踏まえ、自分自身に落とし込む、不足を補う
  3. 人材育成に携わる1ビジネスパーソンとして、顧客アドバイスに活かす
  4. 日本流データサイエンティストに必要なスキルの基本について、意外なスキルも含めて咀嚼しながら理解する

本書のタイトルを見て難しく感じる方もいるかもしれないが、お読みいただくとわかる通り、本全体が私たちに語り掛けてくれるような構成となっている。

おそらく、「私の組織では「データサイエンティスト」的思考は不要かな……」という方はもうほとんど存在しないであろう。

著者もあとがきで書かれている通り、最先端のデータ分析の手法を学ぶための書籍ではなく、今後も重要であるに違いない「普遍的な、持続可能なビジネススキル」が学べることが本書の肝である。

私自身、本書を次世代リーダー研修での教材とさせていただきたいと考えているし、本連載フリークの皆様にも、所属を問わず、是非お読みいただきたい。

テクノロジーは確実に進化していく。生成AIは秒針秒歩で進化している。さて、私たちはどこへ向かうのか……。

ビジネスパーソンもスキルをアップデートし続けなくてならない。この「超基本」と謳われている奥深い1冊で、楽しみながら学んでいただきたいと思う。

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