人材教育 The Movie ~映画でわかる世界と人~ 第50回 「アメイジング・グレイス」川西玲子氏 時事・映画評論家
「アメイジング・グレイス」
2006年 イギリス 監督:マイケル・アプテッド
日本のドラマ『白い巨塔』の主題歌にもなった讃美歌『アメイジング・グレイス』の歌詞は、奴隷船の元船長が改心して牧師となり、過去を悔いてつくったものである。アメリカの奴隷制度が、南北戦争を経て1865年に廃止されたことは有名だが、イギリスではそれに先んじて1833年に奴隷制度が廃止されていた。
大英帝国の繁栄は、奴隷貿易に支えられるところが大きかった。この映画は、奴隷貿易廃止を社会運動から政治のテーマに引き上げ、少数の仲間と議会を舞台に奮闘を続けた、ウィリアム・ウィルバーフォースの姿を描いたものだ。
背景に濃く流れるキリスト教精神や霊的体験など、日本人には分かりにくい面もある。だが改革者の歩む困難な道や、試行錯誤を繰り返す粘り強い努力、障壁を突破するために繰り出す奇策など、仕事をしていくうえで参考になる点が多い佳作である。