OPINION3 「いきなり管理職」をなくす段階的ステップのつくり方 若手が避ける「罰ゲーム管理職」曖昧さを楽しむ人材をどう選ぶか 伊達洋駆氏 ビジネスリサーチラボ 代表取締役
伊達洋駆氏
「なぜ管理職になりたくないか」ではなく「誰が曖昧さを楽しめるか」を探れ――。
ダークトライアドが昇進を歪め、役割の曖昧性・葛藤・過負荷の“ 三重苦” が若手を遠ざける一方、日本企業の競争力はその不確実さを受け止めるミドルに宿る。
権限委譲と段階的育成で自己効力感を養い、「タスク・関係性・変化」をバランス良く操る次世代リーダーを、組織調査の第一人者・伊達洋駆氏が語った。
[取材・文]=平林謙治 [写真]=ビジネスリサーチラボ提供
「なりたがる」への期待に潜む危険
「罰ゲーム化」という言葉に象徴されるように、「管理職になりたがらない若者たち」を巡る昨今の議論では、管理職という立場や役割そのものにネガティブな視線が集中しやすい。
そうした風潮に一石を投じるのが、HR領域で研究知・実践知の双方に精通するビジネスリサーチラボ代表取締役の伊達洋駆氏である。
「そもそも管理職の不人気をあまり煽り過ぎるのも危険でしょう。逆に、みんながみんななりたがって、そういう人がどんどん昇進すれば組織がうまく回るのかというと、必ずしもそうではありません」
伊達氏によると、リーダーになりたがる人のなかには、得てして“リーダーになってはいけない人”が含まれる。しかも周囲には、そういう人ほど“リーダーっぽく”見えるので、選ばれてしまう可能性があるというのだ。いったいどういうことか。
「心理学で『ダークトライアド』と総称される、3つのパーソナリティ特性があります。自己愛傾向や特権意識が強い『ナルシシズム』、目的達成のためには手段を選ばず、他者利用も厭わない『マキャベリズム』、衝動的で共感や良心の呵責に欠ける『サイコパシー』の3つです。こうした特性を強く持つ人は、一種のダークな支配欲や権力志向を秘めながら、見た目には自信満々、カリスマ的に振る舞えるので“リーダーっぽい”と評価されて、結果、昇進しやすいんですね。しかし、実際に強い権限を与えられると、独善的な意思決定やハラスメントといった問題行動が表れかねない。管理職になった本人はポジティブでも、組織にとってはネガティブな影響を与えるリスクが指摘されています」
なりたがるか、なりたがらないか、そこにばかりとらわれると、本来は向いていない人物を管理職に選んでしまうような危険なバイアスが働き、管理職という重要な役割の本質をも見失いかねない。
伊達氏は「現役管理職の人も決して、リーダーになりたくてしかたがなかったという人ばかりではないのでは?」と問いかける。
実際、なりたくないと思っていた人のなかにも向いている人はいるし、なって初めて面白さに目覚めた人も少なくない。そういう人材をいかに正しく評価し、登用・育成するか。組織としての課題は、むしろそこに尽きるだろう。
管理職は本当に「罰ゲーム」なのか
伊達氏らは様々な企業で組織サーベイや人事データの分析を実施しているが、「エンゲージメントに関しては基本的に上位の役職者ほど高くなる傾向が顕著」だという。

