HR TREND KEYWORD 2026 ビジネススキル|NVC(非暴力コミュニケーション) 対立を超えてつながりを築く「ニーズ」に目を向けるコミュニケーション 長田誠司氏 リストラティヴ・サークルズ 代表
長田誠司氏
マイクロソフトのサティア・ナデラ氏は、2014年に同社のCEOに就任したとき、幹部全員に「NVC(Nonviolent Communication=非暴力コミュニケーション)」に関する書籍を渡した。部署間の対立を超えて、創造的に協働することのできるカルチャーを築くためだ。その後、同社の組織風土は大きく改善し、協力関係が生まれたという。NVCとはどのような考え方なのか、一般社団法人リストラティヴ・サークルズ代表の長田誠司氏に聞いた。
[取材・文]=崎原 誠 [写真]=長田誠司氏提供
対立は、「ニーズ」ではなく「手段」のレベルで起きる
コミュニケーションの課題は、尽きることがない。皆が自分らしく力を発揮できる環境をつくるためには、どのようなコミュニケーションが有効なのか。安心して働けるよう、メンバー同士の関係性を向上させるコミュニケーションはどうすれば生まれるのか。そこで紹介したいのが、つながりの質を高める「NVC(Nonviolent Communication=非暴力コミュニケーション)」である。
日本NVC研究所理事で、NVCのトレーナーとしても活躍する長田誠司氏は次のように説明する。
「『NVC』とは、1970年代に、アメリカの臨床心理学者でカウンセリングの大家、カール・ロジャーズ博士の教え子であるマーシャル・ローゼンバーグ博士によって体系化されたコミュニケーション手法です。①観察(Observations)、②感情(Feelings)、③ニーズ(Needs)、④リクエスト(Requests)という4つの要素を意識した対話により、言葉の背後にある相手の価値観や大切にしていることを明らかにしたり、自分自身の意識と向き合ったりしながら、建設的なコミュニケーションを目指します」
つながりの質を高めるための実践的なアプローチとして、家族や友人とのコミュニケーションから、企業や職場、教育・医療機関、政府やNGO/NPO、国際関係など、様々な分野で活用されている。
NVCの特徴のひとつが、「この世界や人をどう見るか」という点だ。
「NVCでは、人を良い・悪いなどで分けません。もちろん、個々の行動には、良い行動・悪い行動というのが結果としてありますし、法律や規則に照らして間違っていることもあります。しかし、その人が何をしていたとしても、そこには何かしら満たそうとしているものがあると捉えます」
この「満たそうとしているもの」のことを、NVCでは「ニーズ」とよぶ。一般的な意味のニーズとは違い、時代や人種、文化などによらず、人間ならば誰にとっても大事なものを指す。たとえば、人との触れ合い、尊厳、食べること、休息などといったものは、誰にとっても大事であり、互いに尊重すべきものといえる。
「人間は何かしらニーズを満たそうとして行動しますが、それが手段として現れてきたときに、対立が起こったり、合っている・間違っている、ふさわしい・ふさわしくないということが出てきます。動機としては、何かを満たそうとしてやっている、それ自体は間違いではないという見方をすると、少し違うレイヤーで物事を捉えることができます」
相手がなぜそう主張するのか理解できなかったり、よくわからない間違いを繰り返す人がいたとき、「こういうことを満たそうとしてやっているのか」とわかると、相手の理解につながり、「それならこういうやり方もあるんじゃない?」などと、別の手段を一緒に探すこともできるかもしれない。本当に満たしたいニーズに立ち返れば、協力したり、互いのニーズを満たす方策の検討につながるのである。
その人自身や行動そのものよりも、その人の持つ「ニーズ」に目を向け、それを満たすためのアプローチを取ろうという姿勢が、NVCの特徴だといえるだろう。
NVCのコミュニケーションを構成する4つの要素

