OPINION 2 育て上手は聞き上手! 経験学習を促す聞き方の極意
自分で考えられる人材を育てるには、日々の仕事やOJTの中で、上司は特にどのように部下の話を聞けばいいのだろうか。“育て上手な上司”として定評のある阿野氏は、「1対1で聞き切る」ことの重要性を説く。その底流には「1人ひとりの存在を認め、“和顔愛語”で接する」という“こころ”がある。阿野氏に、その方法とノウハウ、またそれらを習得した経験を伺った。
今に生きる異業種での経験
──以前は輸入車販売の「ヤナセ」で営業を担当されていました。
阿野
ヤナセでは、新人時代1日100件以上の飛び込み営業をして、特段の成果もなく疲れて帰ってくると、課長が「ちょっとおいで」とお茶を出してくれて、今日あったことを聞いてくれました。これがとても慰めになりました。話を聞いてもらうと気持ちが楽になり、明日も頑張ろうと思えるようになります。話を聞いてもらうのは嬉しいことなのだと実感しました。また、ヤナセでは自分の中にマネジャーをつくり、自問自答しながら1人でセールスをしていました。自分の中に存在するマネジャーが、自分という営業マンを動かしていたのですね。その経験が今になって非常に役立っています。その後、プルデンシャル生命保険のマネジャーに育てられて「人は環境で育つ。その環境をつくっているのは人である」ということを学びました。そして、MDRT※の事務局長や、営業所長を経験する過程で、人材をヘッドハンティングして育て、組織を構築していくためにはどうすればいいかを会得しました。
──メキシコでも営業本部長として、異文化の中で人材育成に尽力された経験をお持ちですね。
阿野
メキシコでは阿吽の呼吸がききませんし、このくらいのことはわかっているだろうと思っても、実はわかっていないことが多く、きちんと何度も説明しなければなりませんでした。フローチャートに書くなどしてイメージを持たせないと理解が難しい。しかし、日本人の場合も、人によって習熟度は異なりますよね。日本の教育制度や企業論理ではスピード感が求められ、習熟度の遅い人を待っていられないのが現状なのでしょうが、私は“それでも待ってあげなければいけない”と、メキシコでの経験から学びました。
失敗から学んだ部下を伸ばすノウハウ
──自分で進めてしまったほうが楽ではないですか。
阿野