第43回 「2040年の産業構造」から新たなチャンスを見いだす 菊池健司氏 日本能率協会総合研究所 MDB事業本部 エグゼクティブフェロー

経営や人事を担う人にとって、ビジネストレンドの把握は欠かせない。
1日1冊の読書を20年以上続ける読書のプロが、ビジネスを読み解く書籍を紹介する。
中長期の未来ビジョンを国が公開
2025年7月、経済産業省が産業構造審議会の総会を開催した。日本の産業の未来像を探るうえでも、関連資料に目を通していただきたい。
特に重要なのが、2025年6月に公開された、経済産業政策新機軸部会による「第4次中間整理~成長投資が導く2040年の産業構造~」だ。
国が産業構造全体にわたる中長期の未来ビジョンを公開するのは実に8年ぶり。15年後の産業構造においては、①製造業X(=製造業のDX等による高付加価値化)、②情報通信業・専門サービス業、③アドバンスト・エッセンシャルサービス業(観光【飲食・宿泊】、卸・小売、医療・介護、運輸、建設等)が鍵を握ると明言されている。いずれの分野も日本の強み・弱みを見極めながら、日本といえば「ここは他国に負けない」という産業分野の“一番星”を創り上げていく覚悟が必要だと改めて感じている。「人手不足」をいかにカバーし、仕事における、“人間と自動化の折り合い”をどうつけていくのかといった課題も山積みである。
さらに読者に注目してほしいのが、2040年の「就業構造」の予測である。一例だが、多くの産業で研究者・技術者は不足傾向に陥る。とりわけ、AIやロボット等の活用を担う人材は合計で約300万人不足すると予測されている。未来のリスクがわかっているのであれば、今から手を打たなければならない。理系人材の獲得合戦は熾烈を極め、在籍する自社の社員を「AIを使いこなせる人材」に育て上げる必要性も当然出てくる。
日本の良さを再認識する機会に
今回、国のビジョンから改めて思うのは、日本にはやり方しだいで、まだまだ大きなチャンスが拡がっているということだ。世界最速で進む少子高齢化、デジタル化の遅れへの指摘など、悲観的な論調も多いが、世界で評価される大企業・中堅中小企業・スタートアップも数多い。私の周りにも、優秀な若い経営者が増えてきたと実感している。今回は以下のポイントで選書してみた。
①グローバルスタンダードが学べる必読書
②世界を知るために不可欠な地政学が学べる書籍
③理系志向が学べる書籍