連載 人事徒然草 第5回 人事部長は自信を持って!
本誌編集部から「会社の変革にブレーキをかける人事部とか人事部は守旧派であり抵抗勢力である、という声がありますがどう思いますか?」と問いかけられた。同じような質問を日経の取材でも受けた。
そういえば読者からのメールにも「ここ10 年を振り返ってみると、人事部の敵はいつか労働組合から経営者に変わっていた。それに気づかなかったことが人事部門の失敗だった。これからの人事部長は経営者に強い人でなければならない」とあった。“敵”とは穏当でないが、当たっているところもあるようだ。
さて、どこの人事部でも「この内容ではムリだ、労働組合が受け入れる条件は曷と議論する前から妥協点を探つてこなかっただろうか?
組合員の総意を把握することは、もちろん大切なことだが、受け入れの可否だけを基準にしていると変革の方向を見誤ることになりかねない。労働組合は革新勢力ではあるが、こと労働条件の変更に関しては過去からの発想に陥りがちになり、よほど明確な未来像を示さないかぎり話には乗ってこないものだ。
そうこうするうち変革の意気に燃える経営トップから、人事部は労働組合の代弁ばかりしている、となりかねない。かつて社長の条件は、人事と営業をマスターすることとされていた時代からは考えられない地盤沈下だ(……えっ!
そんなこと知らなかったって。信じ難いでしょうが、昔はそうだったのです)。
こうした事情もあってか、最近各企業にお伺いすると、他部門のエースが人事部長に就かれているケースによく出合う。謙虚に「なにぶん素人ですから……」のあいさつから始まる。他部門からの転入は歓迎すべき事柄ではあるが、選ばれた本人は大変だろうと思う。人事部門にも結構固有の術語があり、言葉の理解から始めなければならないからだ。しかし素人を標榜できるのも半年くらいのもので、期待に応え早急に結果を出していかなければならない。