OPINION4 失敗は短期ではなく「長い目」で捉えることが大切 「推し」のカルチャーをつくり、チームでコラボレーティブにチャレンジする 安斎勇樹氏 MIMIGURI 代表取締役Co-CEO/東京大学大学院 情報学環 客員研究員
「失敗」とひと口にいっても、その中身や、捉える時間の幅によって向き合い方は異なってくる。
個人や組織にとって学びを得られる失敗とはどのようなものか。
また、そのような失敗を奨励するには、どのような組織文化をつくるべきなのか。
組織コンサルティングファーム・MIMIGURIの経営と東京大学大学院での研究活動を並行しながら、組織の創造性を高める方法論を探求する安斎勇樹氏に聞いた。
[取材・文]=増田忠英 [写真]=MIMIGURI提供
「失敗」は4種類に分けられる
「失敗から学ぶことが大切だとよくいわれますが、失敗にも様々なものがあります。たとえば経営であれば、『新規事業の仮説を外した』『月次の粗利目標の未達』など、様々な失敗が想起されますが、もっとも確実な失敗は『倒産』です。倒産してしまったら、事業活動が続けられなくなるわけですから、それだけは避けなければなりません。そう考えてみると、『失敗から学ぼう』というスローガンを経営や現場に導入するには、失敗の解像度をもう少し高める必要があると思います」
そう話すのは、MIMIGURI代表取締役Co-CEOで、東京大学大学院 情報学環の客員研究員を務める安斎勇樹氏。安斎氏は、失敗と学習の関係性を、奨励したい失敗と回避したい失敗、次に活かしやすい失敗と次に活かしにくい失敗の4象限に分類して整理している(図)。
【左上】知の探索
新規事業で新しいことを試したり、新しい営業の方法を試したりといったことは、奨励したい失敗であり、次に活かしやすい失敗といえる。
「わかりやすい例が逆上がりの練習です。できるようになるまでは失敗の連続ですが、鉄棒と自分の距離の取り方や足の上げ方など、いろいろと試してみない限り、できるようにはなりません。このような試行錯誤は仕事においても必要です。営業なら、アポの回数を増やすことでクロージングしてきた従来のやり方から、アポの回数を半分に減らして成約を取る方法を試してみる。それで一時的に成約率が下がってしまったとしても、価値ある失敗といえます」
【右上】不注意・怠慢
不注意や怠慢などで起こる失敗は、できれば回避したいが、意識レベルやマニュアル、ルールなどで改善できるため、次に活かしやすい失敗といえる。
「たとえば、書類にお客様の名前を間違えて書いてしまうようなことは避けたい失敗ですが、一度起きてしまったら、そこから学んで二度と起きないように次に活かすことは比較的やりやすいでしょう」
【右下】被災
大きな災害などによってもたらされるような致命的な失敗は、次に活かすにはダメージが大きすぎるため、できれば回避したい。
【左下】ボケ