第30回 テクノロジーが劇的に進化する時代の「価値」創出をいかに考えるか? 菊池健司氏 日本能率協会総合研究所 MDB事業本部 エグゼクティブフェロー
経営や人事を担う人にとって、ビジネストレンドの把握は欠かせない。
1日1冊の読書を20年以上続ける読書のプロが、ビジネスを読み解く書籍を紹介する。
瞬く間に身近となったAIの存在
ChatGPTをはじめとした生成AIサービスの登場は、いわゆる「AIの世界感」を瞬く間に身近なものにした。メディアでも頻繁に取り上げられており、2023年の流行語大賞は「生成AI」か「ChatGPT」で決まりではないかとすら感じている。
ChatGPTは、アメリカ、インドに次いで日本のユーザー数が多いとされる(本稿執筆時点)。
ChatGPTを運営するOpenAI※1のCEOであるサム・アルトマン氏は2023年に2回来日を果たしており、岸田総理大臣との面談や慶應義塾大学の学生との対話などは大きく報道された。多忙を極める世界の最注目人物による短期間での来日は「日本市場への期待」の現れに他ならない。
ちなみに OpenAIは、新たなビジネスモデルを市場に持ち込み、業界に革命を起こす企業を毎年ピックアップしてくれる大注目の企業ランキングである「CNBC Disruptor 50(2023年版)」において、堂々、初登場第1位に輝いている※2。
AIの世界が、まさに「秒進秒歩」で進化しているなか、人事部門においては、今後の人材戦略を検討するうえで「単にどの仕事がAIに代替されてしまうのか」という議論にとどまらず、職場における人間の仕事の価値を再定義していく必要がある。
AI時代に必要な「価値」を追求する
1996年の普及当時には懐疑的な見方もあったが、2023年になったいま、インターネットがない社会はもはや考えられない。きっとAIも同様の存在になっていくのであろう。
そしてAI時代において、ビジネスパーソンにとって大切なことは人間の「価値」をいかに創出していくか。そして、「価値」の定義を自分なりに解釈していくことが大切な時代のように思える。
こうしたテーマに向き合ううえで、今回は以下の視点で選書してみた。
① AI時代を考えるうえで耳を傾けたい主張が論じられている書籍