おわりに ポジティブ管理職育成は人事より始めよ
「管理職になりたくない」という人が増えていると聞くが、果たしてこれは本当なのだろうか。本特集にあたってアンケート調査を行ったところ、77.3%の一般社員が「なりたくない」と回答する結果となった。2018年に同様の調査を行った際は72.8%だったため、経年で見ても、確かに「増えている」といえるだろう。
そもそも「なりたい」と思う人を増やすことは必要なのだろうか。この疑問をOPINION1の田中聡氏にぶつけたところ、増やすべきと述べたうえで、「会社の現状を変えたい、より良くしたいという意欲を持っている人が、その影響力を行使する権限を持てる責任あるポジションとして管理職は存在する」と解説してくれた。会社のことを考え、その影響力を行使できる高い専門能力を持った管理職は重要な存在だ。しかし今は、そうした人材が勝手に育つ時代ではない。人事が意図的に「育てる」ためにはどうすればいいか。特集を振り返りながら考えてみよう。
①役割の明確化と業務の棚卸
管理職の実態アンケートでも、管理職になりたくない理由の上位に「管理職の負荷と報酬アップが釣り合っていないから」「業務量や業務時間の負荷が高いから」が挙げられているとおり、現在の管理職は多忙を極めている状態だ。そこでまずは管理職の役割を明確化し、業務の棚卸を行うべきだろう。田中氏は、1on1を必ずしも上司が行わなくてもよいのではないかという見解を述べたが、1on1を部下マネジメントの中心に据えるカルビー(CASE1)の流郷氏も、「1対1で上司が部下を見るだけでなく、逆に部下が上司を支援したり、部下同士が支援し合ったり、あるいは斜めの関係の上司に頼ったりしてもいい」と提言。そのために同社では、まずは管理職が孤立しないために、互いの成功例や失敗例を共有し合うセッションプログラムをはじめとした、管理職同士で経験を分かち合う機会が用意されている。たとえば、「メンバーに会議のファシリテートを任せる」といった任せ方の事例を学ぶこともでき、そうした輪が広がれば管理職が頼れる先が増えていく。