COLUMN “0から1”の価値を生む自由な働き方の実践者・仲山進也氏に聞く 「組織のネコ」の生態ガイド 仲山進也氏 仲山考材 代表取締役/楽天グループ 楽天大学 学長
IT大手の楽天で、EC出店者の学び合いの場「楽天大学」を創設した仲山進也氏。
今のように複業や兼業、自律・自走が問われる10年以上前から、組織の規律に縛られることなく自由に働き、事業の発展につながる価値創出を続けてきた。
働き方考察の造詣も深い仲山氏に、個が活きる組織の在り方をたずねた。
[取材・文]=たなべやすこ [写真]=守谷美峰
組織で働く人の2タイプ
―― 仲山さんは楽天で唯一のフェロー風正社員だとお聞きしました。
仲山進也氏(以下、敬称略)
1999年、楽天がまだ社員20人程度のスタートアップのころに入社して、翌年に楽天市場の出店者さんがEC運営について学び合う「楽天大学」を立ち上げました。
その後、スタッフの増員に伴いマネジャーを務めることになります。ところが当時26歳の自分はマネジメントが何をすることなのかまったくわかっておらず、チームはうまく回らないし、会議や管理業務だけで手一杯になって新しい講座をつくる時間がまったく取れなくなりました。それで「白旗宣言」をして部長職から自主降格させてもらいました。
以来、部下を持たないプレーヤーの立場で、講座を中心に出店者コミュニティをつくる形で成長支援をしてきました。そして2007年に、なぜか兼業自由、勤怠自由、仕事内容自由の正社員になります。翌年には自分の会社を立ち上げ、楽天の仕事と並行しながら面白そうなことをプロジェクトベースでやっています。チームビルティング系のプログラムを軸にした組織文化醸成プロジェクトが多いです。
―― ご自身に忠実な働き方ですね。
仲山
会社に忠実な“組織のイヌ”という表現がありますよね。だったら自分に忠実な“組織のネコ”という働き方があってもよいと思います。組織に属していても、自分の信念を曲げてまで会社の指示に従う気はなく、自由気まま。だからといってやる気がないのではなく、「やりたくて得意なこと」でお客さんから喜ばれる仕事をするのが“組織のネコ”です。
―― イヌよりもネコがよいということでしょうか。
仲山
そういうわけではありません。イヌもネコも「すこやか」なのがよくて、「こじらせている」のがダメです。こじらせたイヌは思考停止状態で指示に従い、指示されたこと以外はやらなくなります。こじらせたネコは正当な理由なく指示をスルーしたりサボったりします。イヌは統制の取れた動きが得意で、ネコはわちゃわちゃしながら価値をつくるのが得意。タイプが違うだけです。だから、イヌはイヌのままで大丈夫。ただ、近年は「こじらせたイヌ」の人が増えてきている印象があります。
―― それはなぜでしょう。
仲山
企業には2種類あって、「令和5年型」と「昭和98年型」だという考え方があります。昭和98年型とは、高度経済成長期に事業や組織を拡大した会社のうち、その事業や組織の賞味期限が切れているのに、いまだにだましだまし引き延ばしている企業を指します。
そのような会社で「組織のイヌ」として働いていると、指示通りにやっているのにどんどん結果が出なくなり、なんのために働いているのかがわからなくなります。それが「こじらせたイヌ」を生み出し、メンタルダウンする人を増やしてしまっていることが日本の生産性を低下させている大きな一因ではないかと思っています。