CASE2 三井物産人材開発 受講者インタビューを研修評価とコンテンツにフル活用 “生声”主軸の検証・改善サイクル 佐々木 孝仁氏 三井物産人材開発 人材開発部 部長 他
三井物産グループの人材開発、組織開発、語学サービスを担う三井物産人材開発では、3年目研修のプログラムに経験学習のフレームワークを導入。評価には半年後の受講者インタビューを用いる。結果は研修内容だけでなく、受講者向け教材の改善にも活用するという。
活躍人材の行動特性を解明し、学びに反映させる仕組みとは。
[取材・文]=たなべやすこ [写真]=三井物産人材開発提供
生声にこそ改善のヒントが潜む
三井物産人材開発は、三井物産とグループ全体の育成、研修を引き受ける。自社グループの人材開発・組織開発に特化した専門会社を擁するところに「人の三井」の片鱗がうかがえる。
三井物産のルーツは明治初期に創業した旧三井物産にある。当時からすでに海外に研修生を派遣するなど、人材主義を徹底し続けてきたと、三井物産人材開発の佐々木孝仁人材開発部長は説明する。
「商社はモノを持ちません。人こそが事業を支える原動力であることは、歴史が証明し続けてきました。今も人材育成の根幹をOJTに据えつつ、現場での学びを補完しブーストさせる機能として、Off-JTの充実を図り続けています」(佐々木氏)
現在は事業が多角化し、組織の数も非常に多い。人材開発に対する期待や求められる要素も多様化している。各社の経営戦略、人材戦略に基づいて個別化を図ると同時に、グループで一貫して持ち合わせておきたい資質、考え方などは共通のコンテンツでカバーする。
たとえば、ビジネスコミュニケーション研修は社内で用いられる用語をはじめ、日々見られる特徴的なやり取りを取り上げ、グループでの共通言語の習得を目的とする。また近年は主体的なキャリア形成に力を入れ、グループ独自のワークショップフォーマットを開発している。
そして現在の三井物産の研修制度は、①役割期待に応じた研修、②選択型研修、③選抜型研修の3つに分類できるという。
①は新任マネジャー、海外赴任予定者、出向予定者など、役割に合わせたスキルや考え方を扱う研修を指す。新入社員研修などの初期教育もここに含まれる。
「2年ほど前に体系を見直し、いわゆる節目研修は初期教育に限定しました。○年目に自動的に受ける形ではなく、各自の役割に応じて求められるマインドやスキルを、必要なときに習得する考えが原則です」(佐々木氏)
その機能を補完するのが②である。業務に関連するスキル型研修を中心に揃え、社員が自主的に学びたいものを受講する。オンラインや夜間開催の講座も設けており、ワーキングマザーや支社勤務の社員も受けやすい。最近では、DX知識の標準装備に向けた独自のeラーニングや、推奨コンテンツの提供を行っている。③は経営層や次世代経営人材を対象とし、ハイレベルな内容を提供する研修が中心である。
これだけ研修の趣旨やターゲットが異なると、評価観点や手法も一律とはならない。
「選択型研修は受講者層が幅広いですし、事業成長へのインパクトを定量的に測るのは現実的ではありません。ですから企画側が想定するターゲットにリーチしているか、受講者へのアンケートで測る業務活用度が目安になってきます。対する役割期待研修や選抜型研修は、受講者がある程度絞られていて、目的もはっきりしています。日々の業務を通じて、学んだことがどのような形で生かされているかを追跡する必要があるでしょう」(佐々木氏)
評価については、定量的な要素も入れつつ、定性評価に主軸を置いているという。その理由を、人材開発部の宮下公美氏は次のように説明する。