PDCAの中の“話し込み”が 自律型感動人間を育む
全国に98店舗を展開し、効率化と顧客満足を実現している
経営手法で注目を集めるスーパーホテル。
サービスを犠牲にしない効率化を実現しているのは
上司と部下の話し込みによる夢の実現、理念の浸透、
そして、業務のPDCAを支えるサポートシステムである。
理念を絵に描いた餅にしないPDCA
ITを活用したオペレーションの効率化で低価格を実現するとともに、効率化により生まれた労力をサービスの向上に充てることで、高い顧客満足度と高稼働率を誇るスーパーホテル。成果を生み出す源泉は、“理念浸透主義”にある。
同社の経営理念は、「安心、清潔、ぐっすり眠れる」を提供することで、顧客の経済・社会的活動を支えるというもの。理念浸透とはこれを、現場と本社とが一体となって実践することである。山本梁介会長は語る。「当社のホテルにお泊まりになるお客様は、それぞれの地域にない商材を供給しよう、あるいは、地域に足らないノウハウを提供しよう、地域の事業を発展させようといって出張して来られた方たちで、いわば、地域の応援団です。そうした人たちが元気に活動できれば、地域の経済や社会が活性化します。スタッフの一人ひとりがそうした認識を持ち、お客様が活躍されるためのお手伝いをするのが我々の役割なのです」
理念を絵に描いた餅にしないためには、理念に基づきPDCAのサイクルをしっかり回すことが欠かせない。そのためにはまず、全社的な目標を明確にする必要がある。同社ではこれを “顧客に感動されるサービスを提供できること”としている。「たとえば“おはようございます”という言葉。感謝の気持ちが込められたおはようございます、おいしい朝食に込められたおはようございますなど、込められた思いの数だけ“おはようございます”がある。お客様の肩に一日中残っているような“おはようございます”がいえる――そんな対応をめざしています」
全社目標を達成するためには、求められる人材像も必要だ。同社では、「自律型感動人間」の育成に力を入れている。
自律型感動人間とは、周囲の人や顧客に心を配りながら、自分で考えて必要な行動が取れる人を意味する。「マニュアルに基づいた運営を行えば、お客様の不満足要因を取り除くことはできます。しかし、我々がめざしているのは、“こんなことまでしてもらえるのか”とお客様に感動していただけるサービスです。そのためには、顧客の立場に立って物事が考えられ、状況に応じた判断ができる自律型感動人間が不可欠です」
本気で取り組める仕掛けチャレンジシート
こうした全社目標を、現場では、当然ながら日常のPDCAの中で実現していくことが求められる。スーパーホテルでは、「チャレンジシート」と「ランクアップノート」を活用することで、これを支えている。
「チャレンジシート」とは、年度の初めにそれぞれの目標を書き入れるもので、PDCAのPlan(計画)に当たる。ここに書き込む目標は、全社目標をブレークダウンしたもので、たとえば、支店長や副支店長であれば、半期ごとの目標売上高や経営品質(身だしなみ、接客、清掃、朝食)の評価ランキングで何位をめざすといった具合だ。さらに、それを実現するために、具体的にどのような施策を行うかも併せて記載する。加えて、上記の施策を遂行するうえで必要となる能力開発の取り組みも記入する。部下のいる人は、部下の育成に関する取り組みも求められる。