経営と現場を巻き込み ゼロベースで体系再構築
2002年に教育体系をゼロベースで再構築した共同印刷。
現在は教育が社内に根付き、
現場を巻きこみながら順調に教育内容を充実させている。
こうした成果が上がったのも、経営層と直に話し、
自社が求める人材像を明確にしたからこそ。
体系を見直す時のポイントを紹介する。
長年にわたり、OJT中心の人材育成を行っていた共同印刷で、体系的な人材育成システム「トータルキャリアアッププラン」(24ページ図表2)の構築がスタートしたのは2002年。きっかけとなったのは、印刷技術のデジタル化など、技術が高度化したこと。その背景について人事部教育課の上妻祐司氏はこう話す。「印刷技術のデジタル化により、専門スキルの高度化と多様化が急激に進み、全社一律での教育が難しくなりました。そこで2000年、新入社員導入研修と新任管理者教育だけを人事部に残し、それ以外すべての社員教育を各部門に移管したのです」
だが、折からの市場競争の激化により、どの部門でも社員たちの業務は大幅に増加。職場でのOJTに手間や時間をかける余裕はなくなり、部門内教育も“とにかく今必要なスキル”に絞られてしまった。「この影響が、ボディーブローのように効いてきて、問題が生じてきました。また、あらゆる階層で素早い判断をする機会が増え、次世代リーダーの育成が強く求められるようになりました。その結果、経営やマネジメントに関する体系的な教育ニーズが高まってきたのです」(上妻氏)
このような動きを感じた経営層は、ついに人材育成の改革を決意。当時、営業部に所属していた上妻氏を人事部へ異動させ、大がかりな体系づくりが始まった。
5年以上の月日をかけ人材育成体系をゼロから構築
まず取りかかったのは、同社の人材育成を包括する「トータルキャリアアッププラン」(図表2)の概要づくり。
図表2が示すように、プランの中央に据えられた横軸のラインが、資格制度とリンクして次代の経営者を育成するための「ビジネスリーダー育成プログラム」。そしてこのプログラムを軸に、人事制度と教育が巧みに連携されている。こうした全体像をとりまとめた、当時の人事部次長兼人事課長(現・常務取締役)の小笠原誠氏は、その狙いをこう語る。「体系をつくるに当たって考えたのは、知識やスキルの習得という“教育による育成”と、職場での経験による育成、すなわち“配置による育成”を連動させることで、相乗効果をもたらすようなシステムができないだろうか、ということです」