CASE1 旭化成|研修の学びと実践を接続する マネジャーを起点に広げる学びと成長の輪 三橋明弘氏 旭化成 人事部 人財・組織開発室 室長 他
研修の学びを実践と結びつけ、行動変容を起こせるかどうかは、
マネジャーしだい――。
コーチング、アセスメント、1on1でマネジャーを支え、
個人の成長力を引き出す旭化成。
研修のオーナーである現場を主導に回す学びのサイクルとは。
個人の行動変容はマネジメント力次第
2022年4月にスタートした「新中期経営計画2024」で人財のトランスフォーメーションを謳う旭化成。重点テーマは「自律的キャリア形成と成長の支援」「マネジメント力の強化」だ。
マネジメント層は人財育成における最大のステークホルダーといっていい。今後は彼らを巻き込み、人財要件定義、育成施策設計、施策PDCA、学習コースづくりなど様々なシーンに視点を活かしていく。
そのためにもマネジメント層自体を育て、彼らを起点に組織の成長力を上げなければならない。そこで展開するのが、①コーチング、②組織の定期点検、③1on1による三位一体型の人財育成戦略だ。以下、取り組みを追ってみよう。
① コーチング-「新任部長マネジメント強化プログラム」
マネジメント層のなかでも特に重視するのは部長層だ。
人事部人財・組織開発室室長、三橋明弘氏(以下、三橋氏)は次のように話す。
「『社員教育のオーナーは従業員自身であり、ラインである』。この原点に立ち、部長以上の層の研修への関与度を高める取り組みを進めています。もちろん強い育成マインドを持つ層ではありますが、従来は他企業と同様、実践とOff-JTを切り離して捉える人が多かったのではと思います」
実践とOff-JTの接続をマネジャー自ら体感できるのが、新任部長向けの「マネジメント強化プログラム」だ。一通り習い、覚えて終わりといった単体型研修ではなく、コーチによる伴走型の研修で、実践を意識した内容である。
「期間は約6カ月。主な柱はコーチング、集合研修、自己診断ツールによる内省支援。オンラインを駆使して寄り添い、新任部長のマネジメント上の悩みを共有して解決を支援していきます」(人事部人財・組織開発室エキスパート富田智晴氏、以下、富田氏)
コーチングは全6回で各1時間。自組織の課題を明確化し、具体的なアプローチを考えて取り組みを深化させる。コーチ陣は社のカラーや事情を熟知する社内コーチと、社外のプロコーチとで構成されている。
「ただし、コーチングはコーチによってばらつきが起きやすく、密室化しやすい。そのため、定例会議を実施し、個人情報に触れないように注意しながら内容を共有するようにしています。討議を重ねてノウハウをアップデートし、質を高めてきました」(富田氏)
集合研修はオンラインで行う。主な狙いはビジョンを描く力や発信力の向上だ。他の参加者とも対話を重ね、ネットワークづくり、相互支援につなげる。内省支援にはパーソナルアセスメントを用いてマネジメント行動スタイルを測定。強化した方がよい点があればコーチングの際、深掘りし、行動変容につなげる。
「プログラムの修了後、アンケートを実施していますが、回を追うごとに満足度は上がってきていますね。特に『内省を深める支援を得られた』『行動や意識の変化があった』といった声は多いです」(富田氏)