MOVIE 人事に役立つ映画|女性の突破力を認め、活かせるか 樋口尚文氏 映画評論家 映画監督
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このたびの米国アカデミー賞では村上春樹原作、濱口竜介監督『ドライブ・マイ・カー』が国際長編映画賞(かつての外国語映画賞)を『おくりびと』以来13年ぶりに獲得してニュースを沸かせたが、この授賞式は一方でウィル・スミスが壇上で狼藉を働いたことで思わぬ注目を浴びることとなった。大昔なら「愛妻を公然と侮辱された」と憤ってジョークをかました相手を平手打ちしたら騎士のように勘違いされたかもしれないが、今回はこの行為について「そんなに妻というものは夫に庇護してもらわないといけない存在なのか」という異議が沸騰して、ごもっともなことと思った。あんなことをされては奥方の方もうれしいどころか恥ずかしかったのではなかろうか。
ウィル・スミスは賞の剥奪こそなかったが、向こう10年アカデミー賞関連の場には出入り禁止となって、これはまっとうな判断だと思われた。こうして男性至上主義の旧弊がこびりついていたアカデミー賞も徐々に修正が行われているようではあるが、ちょうどこのタイミングで『キャスティング・ディレクター―― ハリウッドの顔を変えた女性―― 』というドキュメンタリー映画を観て、なかなか考えさせられることが多かった。これは1923年に生まれ、ハリウッドでキャスティングという領域を拓いていった女性マリオン・ドハティの足跡をたどる作品だ。