人材教育 The Movie ~映画でわかる世界と人~ 第54回 「ハドソン川の奇跡」川西玲子氏 時事・映画評論家
「ハドソン川の奇跡」
2016年 アメリカ 監督・製作:クリント・イーストウッド
2009年1月15日、オバマ大統領の就任式直前のこと。ニューヨークのラガーディア空港をシアトルに向けて飛び立ったUSエアウェイズ1549便が、その直後ハドソン川に不時着水した。しかも乗り合わせた全員が無事だったという、世界中が驚いた出来事である。
この映画は、イーストウッドが、事故そのものではなくそれを検証する過程を通じて、ベテラン機長の長年の経験に基づく冷静な判断と、その背景にある仕事に対する真摯な姿勢を浮き彫りにしたものである。前作『アメリカン・スナイパー』に次ぐ、プロフェッショナルものと言えるだろう。
○奇跡の偉業にかけられた疑い
飛行機は離陸直後、前方から飛んできた鳥の群れによって、両エンジンが停止してしまった。管制室に緊急事態であることを告げると、管制官は2つの選択肢を提示する。出発したラガーディア空港に戻るか、隣接するニュージャージーのテターボロ空港に着陸するかだ。