CASE3 GMOペパボ|仕組みの理解と導入時の注力ポイント解明に効果 トライ&エラーで見えてきたOKR運用の要点 太田紘子氏 GMOペパボ HR統括部 HR統括グループ 人事企画チーム
インターネットサービス大手のGMOペパボでは、人事制度の刷新を契機にOKRの運用を2021年に開始した。
人事部門では全社展開に先立ち、1年間の準備期間を設けたという。
部内でのトライアルで得た気づきを中心に、OKR導入のポイントをたずねた。
人事制度を補完するOKR
GMOペパボでは2021年に、KPIマネジメントと並行しOKR(Objectives and Key Results)の全社導入に踏み切った。背景には2020年に行った人事制度の刷新がある(図1)。HR統括部HR統括グループ人事企画チーム太田紘子氏は当時の状況を次のように語る。
「かつては半期ごと、その期初に個人目標を立て、その達成度を測るMBO(Management by Objectives)に近い形を採用していました。しかし導入から時間が経過し、会社のフェーズと合わなくなってきたのです」(太田氏、以下同)
理由は3つある。1つめは求める従業員像の変化だ。事業規模が拡大し、テクノロジーがより高度化するなかでジェネラリストからプロフェッショナル志向へと変化した。2つめは在宅勤務など、働き方の多様性・柔軟性を高めたこと。マネジャーが部下の働きぶりを常時見ることができなくても、適正に評価し、成長支援できる方法が必要となった。
3つめはエンジニアを中心とした採用競争激化による、報酬の引き上げである。
そこで新人事制度では、中長期にわたる組織貢献と人材育成支援を重視する形に変更。期初の個人目標設定は任意だが、期末は自身の行動を「作り上げる力」「先を見通す力」「影響を広げる力」の3つを軸とした全社共通の等級要件で振り返る。
「3つの評価軸は、『ペパボマインドを実践し、変化し続けることができるクリエイティブ人材』という当社の人材育成方針に沿ったものです。日々の業務について、どのように先を見据え、どのようにアクションし、周囲へどのような影響をもたらしているか。評価シートにプロセスと要件を満たせている根拠を明記します。それをポイント化するという方法です」
MBOの要素はマネジャー職など高い等級に限定し、短期および中長期での組織目標の達成率を軸とした成果の最大化と成長支援のための仕組みに整えた。
一方、新しい人事制度では個人目標設定を任意にしたことで、社員によっては業務の振り返りがうまく行えないのでは、という新たな懸念が生じる。また、“目標を立てること”で会社と働き手のベクトルを揃えていたという点を、別の形で補完する必要もあった。そこで注目したのがOKRだ。
「組織の目指すところに向かって成果を上げるために、パートナー(社員)が業務に自然とコミットできる仕掛けを求めていました。OKRは達成率が60~70%になるような高い目標と指標を立て、短いタームで運用します。事業の成長を加速させ、また、個人の役割や責任を明確化するうえで有効だと考えたのです」
今の同社の状況にマッチしたフレームワークだと思われたが、導入には綿密な準備を要すると判断した。新しい施策は小さく試す慣習のあるHR統括部にとって、部内でのトライアルは自然な流れだった。